ゼノンはアレンとの交流を通じて、少しずつ自分の心を開いていった。アレンの明るい性格は、彼の内に秘めた不安を和らげてくれる存在だった。村の日常の中で、二人は互いに支え合いながら様々なことを学び、成長していく。

　そんなある日、村に不穏な噂が流れ始めた。近隣の村が何者かに襲われ、家が焼かれ、住民が誘拐されたというのだ。村人たちは恐れを抱き、家の中に閉じこもるようになった。ゼノンもその話を耳にして、心の中に不安が広がった。

　「もし本当に危険が迫っているなら、何か手を打たなければ…」

　彼はアレンと相談することに決めた。二人で村の長老のもとを訪れ、情報を集めることにした。長老は深刻な表情を浮かべながら、襲撃者についての話をした。

「どうやら、闇の魔物が出没しているらしい。奴らは力を求め、村を襲っている。しかし、我々には手が足りない…」

　その言葉を聞いて、ゼノンは思わず立ち上がった。彼はかつて戦い続けていた賢者の血が騒ぐのを感じていた。力を持たない彼にできることは限られていたが、仲間がいることで何か変わるのではないかと考え始めた。

「僕たちが行くよ。アレンと一緒に、襲撃者を調べてみる。」

　アレンは驚いた表情を浮かべたが、すぐにその目が輝いた。

「本当に？でも、危ないよ…」

「大丈夫だ。僕は戦うつもりはない。ただ情報を集めて、村を守る手助けをしたいだけだ。」

　ゼノンは、自らの意思を固めていた。彼はもう一人ではない。アレンと共に行動することで、二人の力を合わせて村を守ることができると信じていた。仲間と共に、彼は新たな一歩を踏み出す決意をした。

　準備を整えた二人は、村の外れへと向かう。ゼノンは過去の経験を思い出しながらも、今はその力を使わずにすむことを願っていた。彼は自分が賢者であったことを意識しつつも、戦うことを避けたいと思っていた。

　「ゼノン、あそこに人影が…！」

　アレンの声に反応し、ゼノンはその方向へ目を向けた。彼らの視界の先には、黒い影が揺らめいていた。それは、襲撃者の一団だった。ゼノンは心臓が高鳴るのを感じ、同時に不安が胸を締め付ける。

「落ち着いて、アレン。まずは様子を見よう。」

　彼はアレンに静かに指示し、二人は木陰に身を潜めて観察を続けた。襲撃者たちは、村の方へ向かって歩いているようだった。その姿を見たとき、ゼノンは心の中で決意を新たにした。

「このままでは村が危険にさらされる。何とかして彼らの動きを止めなければ…」

　彼は仲間を守るために行動を起こす準備をしながら、心の奥底で湧き上がる葛藤を感じていた。過去の自分ならば、即座に戦いを挑むところだ。しかし今は、アレンがいる。彼を守りながら、自分自身もこの冒険に挑んでいく覚悟が芽生えていた。

　ゼノンはアレンに目を向け、力強い決意を示した。

「行こう、アレン。一緒に村を守るために、行動を起こそう！」

　そう告げると、二人は静かにその場を離れ、襲撃者たちに近づくための計画を立て始めた。ゼノンの心には、過去の賢者としての自分と、今を生きる少年としての自分が交錯していたが、今の彼には仲間がいる。その思いが、彼をさらに前へと進ませていた。

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