居場所
ゼノンは村人たちとの日常を楽しむ中で、少しずつ自分の居場所を見つけていった。田畑の作業や子供たちとの遊びの中で、彼は笑顔を交わすことで心の重荷が少しずつ軽くなっていくのを感じていた。しかし、彼の心の奥には、やはり誰かに頼ることへの抵抗感が消えずに残っていた。
ある日、ゼノンがいつものように畑で働いていると、村のはずれに見知らぬ少年が立っているのに気がついた。彼は草むらの中から何かを探している様子だった。ゼノンはその姿に興味を引かれ、声をかけることにした。
「何を探しているの?」
少年はびっくりして振り返った。彼は貧相な服装をしており、目には少しばかりの怯えが見えた。ゼノンは優しく微笑み、少年に近づくと、彼の手には小さな魔法の杖が握られているのを見つけた。
「僕の名前はアレン。魔法の道具を失くしちゃったんだ。見つけられないと、師匠に怒られちゃう…」
アレンの言葉には不安が溢れていた。ゼノンはその姿に心を痛め、手を差し伸べることにした。
「一緒に探そう。僕も手伝うから。」
ゼノンは彼の手を取り、二人で周囲を探し始めた。アレンはゼノンの優しさに少し安心したのか、次第に笑顔を見せるようになった。ゼノンもアレンとの会話を楽しみながら、彼に少しずつ心を開いていく。
数十分後、草むらの奥に小さな杖を見つけたとき、アレンは歓声を上げた。
「本当に見つけてくれたんだ!ありがとう!」
その瞬間、ゼノンは何かが変わった気がした。彼が他者を助けることで、相手が喜ぶ姿を見ることは、自分の心にも満足感をもたらすことに気づいたのだ。自分の力が誰かのために役立つこと、それが楽しいと感じるようになった。
その後、アレンはゼノンに仲間になってほしいと頼んできた。彼は村で魔法を学ぶ若者たちの一員として、新しい冒険を一緒にしてほしいと言う。
「君のように強い人と一緒なら、僕ももっと強くなれる気がする!」
その言葉を聞いた瞬間、ゼノンは心の中に新たな決意が芽生えた。彼は再び戦いの道に戻ることを恐れたが、今度は仲間がいる。彼自身の力だけでなく、誰かと共に過ごすことが新しい道を開くのではないかと感じ始めていた。
「わかった。僕も仲間になって、一緒に冒険をしよう。」
こうして、ゼノンはアレンとともに新たな生活を始めることになった。彼はこの小さな出発点が、彼自身の変化と成長のきっかけになることを願っていた。彼の心には、少しずつ楽をしながらも他人との絆を深めていく希望が芽生えていた。
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