500年の謎



戦いの余韻が残るギルドの広間。歓声と拍手に包まれながらも、私はなぜか異質な感覚を抱いていた。ここは確かにファンタジーそのものだが、どこか現代のテクノロジーを思わせる要素がところどころに見える。特に、観客の中にはガラスのようなスクリーンを手にして、リアルタイムで戦いを観戦していたり、解説データを投影している人たちがいるのが印象的だった。


リリが私の肩をポンと叩き、親しげに笑う。「すごい戦いでしたね、翔太さん!いや、本当にびっくりしましたよ。」


「ありがとう、リリ。でも、あの…」私はギルドの中を見回し、彼に訊ねた。「この魔法の世界にしては、やたらとテクノロジーが進んでいる感じがするんだけど…あれも魔法の一種なの?」


リリは私の質問に軽く首をかしげる。「ああ、それですね。これは『魔導端末』と呼ばれる装置でして、ここ数十年で急速に普及しているんです。魔力を使ったデジタルデバイスとでも言いますか。あなたのいた世界の…なんでしたっけ?スマートフォンとか、似たようなものでしょうか。」


「スマートフォン?」懐かしい響きに胸が高鳴る。500年前に使っていたものと似たような機能が、魔力で実現されているとは…。


リリが手元の魔導端末を取り出して見せてくれた。それは私が知っているスマホに非常によく似ているが、微妙に違っていた。光るクリスタルで作られた画面には、複雑な魔法陣が刻まれており、そこに情報が流れ込んでいるようだ。


「これを使えば、リアルタイムで遠くの場所にメッセージを送ったり、他の魔法士の戦闘データを共有したりできるんですよ。技術の進歩と魔法の融合の産物ですね。近頃の魔導研究所では、こういったものがどんどん開発されていて、かなり便利なんです!」


「便利だね…まるで、僕のいた未来世界の延長みたいだ。」私はその装置を覗き込みながら呟く。だがその一方で、ある種の違和感も感じていた。この魔導端末が普及するまでに、いったいどれだけの年月と労力が費やされたのだろう?


リリが私の様子を見て微笑む。「この世界は、魔法が科学の代わりとして発展してきました。500年前の文明がなぜ崩壊したか、その理由は今でも謎のままですが…あなたのような存在は、もしかするとこの世界の秘密を解き明かす鍵になるかもしれませんね。」


「秘密…?」私は心に小さな疑問が生まれる。何かが隠されている――この幻想的な未来世界の裏には、私の知らない事実が眠っているような気がした。


その時、リリの端末が突然鳴り響いた。彼はスクリーンを確認し、少し緊張した表情で私に言った。「翔太さん、大変です!近くの遺跡で、強力な魔獣が目撃されたとの報告が…」


「遺跡…か。行ってみよう、リリ。もしかしたら、僕がこの世界で役に立てるかもしれない。」


リリは少し驚きつつも、意気込んだ表情で頷く。「はい、では急ぎましょう。翔太さんの力、きっと必要とされるはずです!」


こうして私は、新たな冒険へと一歩を踏み出した。この不思議な魔法と科学が交差する世界で、何が待ち受けているのか…500年の眠りから目覚めた私は、自分の存在意義を探し求め、物語の幕を上げるのだった。

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