第8話 南高生徒会

昨日散々な目にあって、結局夜の9時頃まで彼女の機嫌を取るためのカラオケに付き合わされた。学割が無かったら財布が今頃滅んでいた頃だろう。


流石に昨日の今日なので朝練禁止命令を出して教室に向かった。普段通りの時間に登校した為まだ少し早かったようだ。生徒は殆ど来ていない。


普段仲良い連中も居ないし、野球部の連中も朝練がないからと極限まで寝る宣言を昨日していたので暇を潰すために生徒会室に移動した。


そこで仕事を消化しながら時間を潰して教室に戻ると何やらクラスが騒がしい。


「何かあったか?」


トラブルかと血相を変えてクラスに戻ると人集りの中心にはハルトが居た。そういえば昨日涼しい部屋だかなんだかに連れて行かれてから行方を知らなかった。


「ハルトに何かあったのか?」


隣にいたクラスメイトに声を掛けると


「コイツ、なんか変なんだよ」


そう言ってハルトの方を見ると


「あ、会長。いや萩原ユウト君じゃないか!今日もいい朝だね」


何やら心そこにあらずといった表情で外を見つめるハルト。普段は騒がしいのにやけに大人しくのほほーんといった表情をしているので皆心配しているらしい。


「昨日コイツは協議会の時に北に連れて行かれたんだよ」


俺はみんなの前で昨日あったことを話した。きっと昨日あの後に何かあったに違い無い。


「なあ、ハルト昨日向こうで何をされたんだよ」


その問いかけにハルトは


「アリサ様に私の汚れた心を洗浄して頂き、そのまま一晩反省して今朝解放されたんだ」


「昨日は家に帰ってないのか?」


「涼しい部屋で一晩一人で過ごしたよ」


高校生を学校に一晩監禁、しかもこの夜はまだ冷え込む季節にだ。俺は驚愕しながら昨日あった出来事を思い出す。


人目のつかない駅から少し離れたパン屋で彼女と放課後の時間を過ごそうとした時に向こうの二人鉢合わせ、洗いざらい話されて俺の財布がピンチになった件だ。


まあ悪いのは俺だけど、あそこまで話す必要は無いだろ。


「今日の放課後、南北協議会を開く」


その瞬間に教室はざわつき始めた。例年あっても年に一回程度、開催されないのも珍しくはない南北協議会。それをまさか2日連続開く事になるとは。


「会長、ハルトの恨み晴らしてきてくれ」


ハルトは一応クラスでも友達が多い方なので男子メンバーが口々にそう呟く。女子と言えば・・別にこのままでもいっかといった表情だ。ドンマイ!ハルト。


HR直後、授業前の10分休憩で俺は生徒会担当の先生の元に行き経緯を話す。若干めんどくさそうであったが受理してくれ、たまたま職員室に居た新太に昼休憩に生徒会室に集まって欲しいと伝える。結愛ちゃんとは同級生で幼馴染らしいから同じく伝えて欲しいと伝える。


そして1限終わりの休憩時間に雛に昼休憩に召集する件を伝えた。


昼休憩、生徒会メンバーの4人が集合していた。3年生は忙しそうなので今回も1.2年だけで集まっている。


生徒会室には滅多に先生が来ないため隠れてスマホを使いながら俺の今朝の話を聞いている。


「普通に二日連続協議会って正直ダルいんだけど」


雛が俺の話を聞き終えた後にそう言い放つ。


「先輩、なんか奢ってくださいね」


続けて結愛がそう言い放って俺は温度感の違いに少し萎える


「ところでコレはたまたま聞いた話なんだけど、ユウト、昨日ナズナを怒らせたらしいじゃん?」


ギクッと俺の背筋が真っ直ぐに伸びる。


「なんでも北の生徒にバラされたらしいけど、もしかして昨日の北の生徒会の二人にたまたまパン屋とかで出会って全部バラされて、早速腹いせにハルト君の件を使って仕返ししようとしてるんじゃない?」


マズい。内心こっそり思っていたことがバレてしまった。正直あんな目にあったのもハルトが馬鹿なことをしたせいだし、コレで恨みを晴らしてチャラにしようと思ってたのに。


「ま、理由はどうでもいいけど帰りにミスド奢りね」


「賛成!」


「僕もお願いします!」


結局2日連続でまあまあな額の奢りが決定してしまった。うちの学校バイト禁止だから俺の収入源は月1万円のお小遣いだけだ。因みに以前は月5000円だったが、彼女が出来たことを知った母が倍に増額してくれた。理解のある母で助かる。


そして放課後、2日連続で会議室の前にある扉の前に3人で集合していた。鍵は先生から預かっており、顧問の


「昨日みたいな面倒事だけは起こすなよ」


と言った発言を胸に息を整える。


「先輩、連れてきました」


そう声がする方を見ると、新太がハルトにリードを付けて引っ張りながらやってきた。いや犬か


「教室から動かなくて、クラスの人に協力してもらって綱を付けて引っ張ってきました。筋トレしといて良かったですよ。


出来る後輩を目の前に俺は感心している。


「アンタ、コイツが動かないの知ってたから後輩にここまで連れてくるの押し付けたでしょ」


雛が横からそう言い放つのを無視して


「これは、我が校の生徒が傷つけられた深刻な事態だ。俺たちは南の代表として、ハルトの名誉の為に往くぞ」


「うわついに無視」


「先輩、自分の名誉の為ですよね?」


二人のツッコミを無視してドアノブに手を掛ける。


俺の失ったお小遣い2543円(2人分のスタバとカラオケ3時間学割ドリンクバー込み)の恨みを晴らす時間と行こうじゃないか。

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