第30話 神がかった二人

 あれから二ヶ月経った。

 あの日からも瑠実は変わらずに俺の家まで無遠慮に上がってはくつろぎ、最近になっては「同居しちゃった方が効率良くない?」とか言って来る始末。いや、同居は付き合ってからで……おっほん!

 とにかく、変わったことはせいぜいお互いに名前呼びになったことぐらいだ。

 瑠実から「束咲〜」と呼ばれるたびに、新鮮すぎてビクッとしてしまう。まあ、それは向こうも同じみたいではあるが。

 で、ホワイトデーに関しては瑠実にのみ返した。あんな100個越えのチョコなんて返す気ゼロだわ。ちなみに渡したのは普通のビターチョコ。本人はめっちゃ喜んでくれた。

 そして瑠実から渡されたのは超激辛ラーメンのインスタント。……これに関しては言わせてくれ。いらね〜。

 と、そんなこんなでギクシャクとした関係値になるわけでも無かったが、この時期にはビッグイベントがあり、それどころじゃない。

 それこそ──。


「く、クラス替えだ……」

「お前、毎年それじゃん」


 あからさまに肩を落とす俺を見てニヤニヤ笑う悠輝。

 あ、前のバレンタインで俺を視線だけで殺そうとして来たヤツだ。

 ちなみに悠輝はバレンタインチョコは一つも貰えなかったらしい。

 と、そんなことはどうでもよくて「おい!」俺はクラス替えが嫌いだ。

 なぜなら──。


「お前と10年以上一緒に居れば、お前がなんで落ち込んでるのか分かるぜ。女子が嫌なんだろ」

「ド正解すぎてイラつくわ。殴っていい?」

「何でだよ!?あとダメだし!」

「ちっ」

「舌打ちすんな」


 早速仲のいい漫才を披露しながら、昇降口前に貼ってあるクラス表を観に行く。

 えっと、冴木束咲……っと、あった。1組か。よく見ると悠輝もだし。

 ウチの高校のクラスはランキング順にクラスを割り振っていくから、1組は別名『エリート教室』とか言われてる。

 まあ、俺や悠輝みたいに推薦で来た人が占領するんだけど。

 ちなみに俺はeスポーツのスポーツ推薦。この学校にはeスポーツも認めてるからな。悠輝はバレーボールのスポーツ推薦だ。俺のように世界大会で活躍するとかそういうのは無いが、バレーボール日本代表に最年少で選ばれたらしい。シンプルに凄えなと思う。

 と、そんな俺らだが、この時期になると毎年恒例の行事がある。それは──。


「わあ、本物の原宮悠輝だ」

「おい見ろ。冴木束咲さんだぞ」

「あれが世界大会全制覇を果たしたっていう神童か……」


 新一年の視線が俺らに集まる。

 そう。俺らは日本中で有名なため、毎年この時期は注目の的である。

 もう慣れたけど。

 そして毎年必ず──。


「冴木先輩!俺とポ⚪︎モンで勝負してください!」


 こんなヤツがいて──。


「ちーん……」


 数分後には粉々にしている。

 俺に勝とうなんて100年早いわ。

 ちなみに悠輝はというと──。


「原宮先輩!俺、バレー部入るつもりで……!」

「おお!そうか!頑張れよ!」

「俺もです」

「お!いいねえ!元気があって!」


 こんな感じである。

 俺はまた勝負を挑まれたため、片手でゲーム機を操作しながら悠輝の方を見る。

 こうしてみると、悠輝も凄えヤツなんだなって思う。

 え?瑠実は分かってなかったって?アイツはそういった業界に興味が無さすぎるだけだよ。


「ぐわ!負けた!」

「……じゃ、俺行くから」


 俺はパッパとゲーム機を鞄の中にしまい、そのままその場を後にした。


♢♢♢♢♢♢


 そして放課後。


「好きです!付き合って下さい!」

「ごめんなさい」


 校舎裏の告白タイムである。

 今告白して来た子の後ろには、新入生の女子がズラッと軽く50人は並んでいる。

 この子らは全員、俺に会いに来た子達だ。


「じゃ、次の人ー!」

「は、はい!」


 悠輝が次の女子を呼ぶ。

 いや、お前何やってんだよ。部活あるって言ってただろうが。


「好きです!付き合って下さい!」

「あ、ごめんなさい」


 俺はその子を見ることもせずに断り、さっさと終わらせたいと思っていた。


♢♢♢♢♢♢


 そうして下校。

 俺は一人で家へと帰り、家へと上がるとアメが出迎えてくれる。


「アメ、ただいま〜」

「にゃー」


 アメが物欲しそうに俺を見つめる。

 撫でろってことだろう。

 俺はアメの頭を優しく撫でて、そのまま抱っこする。

 アメも重たくなったな。ま、8歳になればそこそこ年はいってるか。

 俺は微笑しながらソファに座る。


「はあ、疲れた……」


──────────

みなさん!修学旅行から帰った来ました!

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