第18話 学校が始まります!

 あれから10日が経った。

 瑠実はいつも通りにウチでゴロゴロしているが、俺はというと、とあることの準備をしている。

 そのとあることというのが──。


「明日は学校なんでしょ?いいなあ、高校生」


 瑠実が羨むような声で言う。

 そう。明日から学校が再開するのだ。

 俺はその準備をしていた。


「まあな。というか、お前はちゃんと高校通ってたのかよ」

「失礼だなあ。大学行ってんだから、高校はちゃんと通ってるよ」

「あんなにバカなのにな」

「おお、今日は何だか一段とパンチが効いてるね……。機嫌悪い?」

「めっちゃ悪い。俺の冬休みが終わっちゃったんだぞ」

「正確にはまだ終わってないけどね」


 瑠実が呆れ気味に言う。

 「何だコイツ」みたいな目で見てるけど、高二の冬休みだから、のんびりとした長期休暇はこれで最後って訳だ。

 そりゃあ機嫌悪くもなる。

 俺は荒々しくリュックの中に課題を詰め込む。

 その様子を見て、瑠実は怯えたように体をビクッと震わせた。


「あ、ごめん……!怖かったよな」

「ううん。大丈夫」


 俺が慌てて謝ると、瑠実は微笑してスマホに目を落とした。

 ……あれ?何で俺、こんなに嫌われたく無いって必死なんだろう……。

 少し不思議に思いながら、今度は優しくリュックに荷物を詰め込んで行った。


♢♢♢♢♢♢


 翌日の朝──。


「はあああああああ……」

「でっけえため息吐くな。こっちまで気分が悪くなる」


 あからさまにデカいため息を吐く悠輝を煩わしく思いながら、俺らは学校に登校していた。

 悠輝と俺の家は、学校まで共に15分程度。

 かなり近いため、余裕をもっての登校だ。


「だってよー、束咲ー。楽しい楽しい冬休みが終わっちまったんだぜ?気分が悪くなるのは当然だろ」

「気持ちは分かるが……。まあ俺も、制服が重く感じはする」


 ウチの学校の制服は、藍色をベースとした、定番中の定番と言える制服。

 ただ、始業式だから着てるってだけで、普段は私服で登校してるから、違和感っちゃ違和感だな。

 久々の制服に違和感を覚えていると、背中をポンっと叩かれる。

 悠輝は俺の前を歩いているため違う。

 後ろを振り向くと、一人の黒髪の女性が立っていた。


「おはよっ!束咲くんっ!」

「おお、菊瀬。相変わらず元気だな」


 この美少女の名前は菊瀬安奈きくせあんな

 黒髪黒目で、背は少しだけ低いながらもなかなかのスタイルで、清楚な見た目だが、性格は天真爛漫な元気娘。

 運動神経は抜群で、この間のバトミントンの大会では全国でベスト8までいったと聞いている。ただ、成績に難ありで、問題児の一人とも数えられているな。

 そんな彼女は、学校入学の後に、最初に告白してきたやつだ。

 どこが良いのかと聞いたら、「顔がめっちゃタイプ」だの「一目惚れだ」だのと……顔しか言ってねえじゃねえか。

 無論断り、そのまま関わることなく──と言うわけではなかった。

 なんと安奈はアピールを継続。俺に何としても恋人になって欲しいようだ。

 俺が安奈に挨拶すると、悠輝がこちらに振り返り、「おっ」と声を上げる。


「安奈ちゃんじゃん。おはー」

「うん!原宮くん、おはよー!」


 悠輝はニコニコしながら安奈と挨拶を交わす。

 前に悠輝に「菊瀬はどうだ?」と、聞いてみたことがある。

 その時の答えが確か──。


「タイプじゃないし、俺はお淑やかなヤツが好きなんだ」


 ──とのこと。

 確かに安奈は活発系の女子だけど、そこまでか……?

 少し疑問に思いつつも、俺らは適当に話しながら登校した。

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