第2話

「すみません。今日はもう店じまいなんですが……」

駅の近くにある定食屋に千晴が到着した時には、もう午後11時を過ぎていた。

店主である親父さんが、申し訳なさそうに言って千晴を迎えた。

隣には同期で、同じ部署の平松佑里の姿がある。

「あーあ。生飲みたいって思ってたのにな」

佑里がボヤく。

「何だ。誰かと思ったら千晴ちゃんじゃないか」

親父さんが白い歯を見せて笑う。

「こんばんは。久しぶり、親父さん」

「こんな時間まで仕事かい?」

「あー、今日はまだ早い方。ウチ、ブラック企業なんで」

福山千晴は大学時代、この定食屋でバイトしていた。父親を早くに亡くした千晴は、母親と2人暮らしで大学も奨学金で通っていた。

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