第3話 旅立ち

ソナティにやられた後のアンゴはとにかく修行した。

あの激闘から十年が経った頃には、アンゴは見違える程に強くなっていた。


十年が経った今でも未だ最終星ラストプラネットに行けた者はいない。


そしてアンゴは、宇宙への旅へ行こうとしていた。


「じゃあな!今までありがとう!俺、プラダ星で生活できて良かったよ!」


アンゴは、プラダ星のど真ん中にある噴水で街のみんなに挨拶に来た。


「ここで暮らしていればいいものを…。」


町長の目には涙も少し浮かんでいた。

そして、もうすぐ旅立つ頃になるとプラダ星の人々が全員噴水に集まってきた。プラダ星は、とても小さい惑星で、人口も500人程度しかいない。


「元気にやれよ!」


「旅団なんかになるもんじゃねぇぞ。」


アンゴの旅立ちには、賛否両論だった。


「じゃあな、俺、行ってくるよ!最終星ラストプラネットに!!!!」


そう言ってアンゴは、思い切りジャンプして空を飛んで行った。


「おいおいおい!!!!」


住民たちは、アンゴを全力で呼び止めたが、その声は届かずに行ってしまった。


アンゴは、生身で宇宙へ旅立っていってしまったのだ…。


そして間もなくしてアンゴは、悶絶した表情ですごいスピードでプラダ星に帰ってきた。


「おい!宇宙って呼吸出来ないのか!?すんげぇ苦しかったんやけど!?」


『当たり前だろ!!』


住民たちは声を揃えてアンゴにそうツッコんだ。


「お前な、生身で宇宙なんて行けるわけねぇだろ!メジャス達は何で行ってた!?」


町長は、鬼の形相で未だ悶絶した表情を見せるアンゴに詰め寄った。


「えーっとなんだっけな、思い出した!スペースシッコ!!」


宇宙船スペースシップだ!!!』


また住民たちは声を揃えてアンゴにツッコんだ。


「ったく、なんでこいつはこんなにバカなんだ?てことはお前、宇宙船スペースシップがないってことだぞ!?お前は宇宙に行けない!!!」


町長はアンゴに指を指してそう言った。


「えーーー!!嘘だろー!!??俺のこれまでの努力なんだったんだよ!?あ、でもおじさんがそのスペースシップを作ってくれよ!」


アンゴは、非常に焦っていた。


「馬鹿言え!あんなもの作れるかい!宇宙にはな、まず重力ってもんがねぇんだ!お前はプカプカ常に浮いてやがるでどうでもいいかもしれんけどな、そんな重力のない場所で使える船なんて知るか!」


「ま、マジかよ!じゃあ、どうすればいいんだ!?」


「まあとりあえず、いっぺん飛行場へ行ってこい。そこに何かヒントがあるかもしれねぇ。」


「分かった、行ってくるよ!」


そう言ってアンゴは、体を宙に浮かせ、全速力で飛行場へと向かった。


そこには、大きな気球型の宇宙船スペースシップが一隻置いてあった。


「あ!あんじゃねぇかよスペースシッコ!あのおじさん、俺に嘘つきやがったな!ぶん殴ってやる!」


そう独り言を言って飛行場を去ろうとした時、その大きな気球型の宇宙船スペースシップに、なにか貼り紙がはってあることにアンゴは気づいた。


「ん?なんだこれ!」


ベリッ


『おぉ、元気にしてるか?アンゴ。お前がこの貼り紙に気づいたってことは、お前ももう大人になったってことやな。早いなあ。これは俺たちからお前へのプレゼントだ。どうせお前のことだから、生身で宇宙に行こうとか思ってたんだろ?って、そんなバカじゃないか!まあいい、とにかくこの宇宙船スペースシップでお前の旅団を作って旅に出ろ!また会おう! メジャス旅団』


「こ、これは!メジャス旅団からの手紙!」


そう言ってアンゴは、涙を流しながら空を見上げた。


「ありがとう、メジャス!俺、もう一回みんなに挨拶してくるよ!」


そう言って振り向いて噴水に戻ろうとした時、もう既に町長含め住民一同が立っていた。


「ハハッ、図星だったな!とにかく、メジャスに感謝するんだぞ。行ってこい!アンゴ!」


町長はそう言って手を振っていた。

そしてそれに合わせてみんなも手を振っていた。


「み、みんな!本当に今までありがとう!俺、行ってくるよ!」


アンゴは、振り向いて宇宙船スペースシップの入口へと向かった。


バタン


宇宙船スペースシップの入口が閉まった。


「じゃあな!!!みんな!ありがとうーーー!!!」


アンゴは、宇宙船スペースシップの窓から思い切り手を振った。取扱説明書を読みながら、なれない手つきで何とか操作し、遂に離陸した。


「おう!最終星ラストプラネット絶対に見つけるんやぞ!」


町長も手を振りながら思い切り叫んだ。


気づいたらアンゴを乗せた宇宙船スペースシップは、もうプラダ星からは見えなくなるまでに遠ざかっていた。


「別れっていうもんは、これまた辛いもんだな。」


町長は右手で涙をこすりながらそう呟いた。

賛否両論分かれていた住民たちのほとんとも涙を流していた。みんなアンゴの努力を知っていたのだ。


「よし!みんなここまで来てくれてありがとう!これにて、アンゴとのお別れ会は終了だ!」


「おお!!」


「っておい!アイツさっき俺を殴るとか言ってなかったか!!??」


涙を一気に引っ込ませた町長は、また鬼の形相で何もない空を見上げたのだった。

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