第27話

其処は小さな神社だった。

本当は愛奈は振袖姿で行きたかったが、白いダウンジャケットにGパンで本堂のお賽銭箱に御銭を入れて柏手を打っていた。

「今年こそは彼氏ができます様に」

中学からの友人の岸本花が隣で手を合わせている。

「愛奈は?」

「私は今年もドラマの仕事頑張れるように」

「矢崎将真との恋が上手く行きますように“じゃなくて?」

「将ちゃんは友達だよー」

愛奈はそう言って笑う。

元旦だけあって、普段は殆ど人が来ないこの神社にも人は多い。

「森越の授業付いていける?」

花が心配そうに愛奈の顔を見ている。

「どうかなあ……でも何とかなってる」

愛奈の反対隣には、同じく友人の美加がいる。

「ねーねー。あれ、碓氷愛奈じゃない?」

「え?何処⁉︎」

愛奈が花や美加と話をしていた時、突然1人の女子高生が愛奈にスマホを向けた。

「ほら、あそこの本堂の所。そうか。愛奈って島根だよね。正月だから帰って来てるんだ」

その姿を見て、思わず愛奈が顔を顰めた。

「花、美加ゴメン。もう行こ」

「愛奈が謝る事ないって。それにしても勝手に撮るなっての」

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