巻き込まれて召喚されたと判断されたサラリーマンのおっさん。戦いを拒否し追放され絶望しながら出世する。ミリタリーチート狩りと呼ばれ、王にまでなった話
山田 勝
異世界に絶望する
「はあ、はあ、はあ、逃げるよ」
「お兄ちゃん」
「トムの兄貴!」
「大丈夫だ。銃は一丁ある。弾は箱一杯だ」
この街を抜け出す。孤児狩りが始まった。
僕たちが街に出て物資の徴用をしていたら本隊が襲われた。
僕らの持っている銃を狙って大人達が動き出した。
子どもでも騎士を倒せる奇跡の武器。それを授けてくれた
ノブヨシ様と合流する。
「この門には誰もいないよ」
「よし、本隊に戻るぞ」
「ヒィ、人が出てきたよ!」
【ア~ハハハハ、クソガキ、俺が噂のミリタリーチート狩りのサイトーだ!
今すぐ投降しろ!銃を捨てて、手を頭の後ろに当てて出てこい。そしたら、軽く袋だたきで勘弁してやる】
「ヒィ、門の前にいる」
「丸腰だ。いや、剣を腰にさしている」
「隣に、魔道士がいる・・・やるか?やれる!」
【我輩がノブヨシを殺した。次、お前達を殺すのも我輩だ!】
・・・あ~、やだ、やだ。子ども三人か。俺は、転移日本人、斉藤堂山、33歳、絶望する。
「サイトー、障壁展開終わり・・」
「ミシュラ、下がっていろよ」
「僕、遠くにいると集中力が落ちる。それに責任者として、こんな時は近くにいるべき」
隣にいるのは、僕っ娘の魔道士ミシュラと・・・後方30メートルの位置でここまで聞こえる息を吐く娘は
「ハッ!ハッ!ハッ!」
猟師の娘、リリーだ。おかしくなったのではない。彼女は鹵獲した銃を持っている。
狙撃の時は息を止める。いつでも狙撃できるように、息を吸って吐き続けているんだと。
馬鹿の怠け者だ。こいつは貴重だ。
こいつらを片付けたら、次は魔王か?やらない。俺はF級だ。第一、銃を持ったノブヨシ君ですら・・・98人がかりでバーベキューにした。
バン!シュン!
「お、撃ってきたか。この距離なのに立ち撃ちで当たるかよ」
俺は、ミル物差しで、彼らを測る。
「お、300メートル以内に入った。あの小さい女の子は助けたいな」
女の子を、建物に隠しているが、丸分かりだ。
バン!バン!バン!
段々、距離が縮まってきた。
そろそろ当たるか?
ピシャ!
「ウォーターボールが一個はじけた・・」
「大丈夫かな。まだ、あるよ」
これは鹵獲した銃で検証したが、弾丸は水で勢いが急激に落ちる。
土嚢は地球で学習した。
爆風や弾丸を防ぐ最も安価な防弾設備だ。
古くは戦国時代、鉄砲が伝来して数十年で京の都で、土嚢壁が出来たと記録にある。
板塀の間に土をいれ。街で無作為に鉄砲を撃つ奴らの弾を防いだんだと。
この世界も、すぐに土嚢に気がつくだろう。魔法がある。ウォーターボールは・・・おっ、戸惑った顔がここからでも分かる。
私は演劇のような口調で脅かす。
【お前の鉄礫など効かない。速やかに投降しろ!銃をすてよ。今なら、拳骨だけですませてやる!】
いや、奴隷にする。こいつらは、人を殺した。街に引き渡せばリンチされ死刑だ。
大人は嘘をつく。
・・・・・
「どうしよう。トム、効かないよ!」
「ええい、もう、突撃をする!サムはマリの元に行って守ってやれ・・・グハ!」
シュン!シュン!
矢が降り注ぐ。ここは街の中、隠れる場所はジャングル並みにある。
指向が私に向いているから出来た軍略だ。
「どうしたのですか?サイトーさん。指示が出ないから、撃ちました。100メートルまで近づいたら、弓を撃てとの作戦です。何故、ボーと立っていました?危ないですよ!」
「いや、アルキデス。ごめん。子ども殺しになれていない。躊躇した。いや、私の指示でやった。これも仕事だ」
ガキ二人は死亡し。
女の子は。
「ヒィ、人殺し!お兄ちゃんを返せ!!ノブヨシ様がやっつけにくるよ!」
「ごめん。本当に殺したよ。見せてやれ」
「ヒィー!嘘―――」
塩漬けにしたクビを見せた。
「ありがとうな。ノブヨシを慕ってくれて」
これは見逃してくれるか。女神教会に相談だ。
はあ、絶望する。
「孤児の持っていた銃です。錆だらけです」
「そうか、これは89式か・・・」
どっちみちフルオートはもちろん、セミオートも出来なかったな。
ウワワワワワーーーー!
街の奴らがやってきた。こちらの勝利と分かったのだろう。皆、薄気味の悪い笑顔だ。例えるなら、二次大戦、パリ解放後、ドイツ兵と付き合っていたパリジャンヌを丸刈りにする暴徒の顔だ。
「サイトー殿、やりましたな!こいつら、散々、人を殺して!」
「こいつだ。ホロホロ鳥を強奪した孤児は!」
「ハンスさんは下半身をやられてもう立てないよ!」
女の子は恐怖でブルブル震えている。怖くて声が出ないのだな。
好都合だ。
「で?サイトー殿、この子は?」
「何か、こいつらについて行っていたのを見たよ」
「ヒィ、グスン、グスン」
ジョオオオーーー!
失禁している。次はなぶり殺しになるのは自分と分かっているのだろう。
絶望する。
「ああ、この子は、こいつらに脅されて人質になったのだ。恐怖で記憶が錯乱しているみたいだ。私がこの子の故郷の女神教会につれていくよ」
「「「何だ、そうか」」」
「死体を晒す。もらい受ける!」
「どーぞ、どーぞ」
また、嘘をついた。今日は何回だ。絶望する。
あ、この子の世話は、何でも『お』をつける似非令嬢、ローズマリーにお願いしよう。
「ローズマリー、この子を頼む」
「フン、お剣士なんて、こんなお役しかないのかしら!」
「いや、大事だよ。正直、銃を持っていても10メートル以内なら君に勝てる気がしない」
これは、本当だ。
嘘か本当か意識して言わないと、息を吐くように嘘つきになる。
「少し、休もう。街の人達が宿舎を用意してくれている」
「「「「はい!」」」
どうして、この絶望の世界が始まったか。転移した日に記憶を遡ろう。
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