連戦
集落の入り口に影が現れ、魔界特有の異様な雰囲気が場を包んだ。暗闇の中から姿を現したのは、巨大な牙を持つ魔物で、全身が鋼のように硬い鱗に覆われている。その背後には、さらに複数の魔物が続いていた。
「何て数だ…!」ライアンが驚愕の声を上げた。
「ここが魔界だということを忘れるなよ。敵が群れで来るのは当たり前だ。」ヴィクトールが冷静に指示を出し、手早く勇者たちに目配せをした。「散らばるな。互いの背中を守りつつ戦うんだ。」
カインは剣を構え、仲間たちを見回した。「よし、ヴィクトールの指示に従おう。ここで怯むわけにはいかない…!」
その言葉に皆が頷き、それぞれの武器を構え直した。シルビアは魔力を込めた矢を放つ準備をし、エレナは周囲を見渡しながら防御魔法の準備を整えた。
最初に突っ込んできた魔物が鋭い爪を振り下ろしてきた。ライアンが反射的に盾で受け止めるが、その一撃の重さに体がぐらりと揺れる。
「くっ、何てパワーだ!」ライアンが歯を食いしばりながら耐えた瞬間、背後からシルビアが素早く矢を放ち、魔物の眼に見事命中させた。
「少しは役に立ったでしょう?」シルビアが軽口を叩くが、その目には緊張が走っている。
「油断するな、まだ来るぞ!」ヴィクトールの声が響くと同時に、カインが剣を振り下ろし、敵の攻撃をかわしながら次々と切り伏せていく。その動きには、先ほどまでのぎこちなさが消え、少しずつ戦闘に慣れ始めているようだった。
「皆、いい調子だ!この調子で押し返すんだ!」エレナが防御魔法を展開し、仲間たちを守るように結界を張る。彼女の魔力で敵の攻撃を遮りながら、仲間たちが反撃する機会を作り出していく。
その様子を見ていたヴィクトールは満足そうに頷いた。「良い動きだ。だが、これはまだ序の口に過ぎんぞ。」
突然、彼は鋭く手をかざし、強力な衝撃波を発生させて前方の魔物たちを一掃した。その圧倒的な力に、勇者たちは一瞬呆然とした表情を浮かべたが、すぐに我に返り、再び戦いに集中する。
それぞれが必死に戦う中、彼らの心には不安と焦りが混在していた。彼らはまだ魔界の厳しさに慣れきれておらず、自分たちがこの場にふさわしい強さを持っているのかという疑念も浮かんでいた。
カインは心の中で独り言を呟いていた。「本当に、俺たちはここで生き抜けるのか…?」
エレナもまた、冷静さを保とうとしながらも、その目には焦燥が浮かんでいた。「もっと強くならなければ…この仲間たちを守れるように…」
シルビアは懸命に矢を放ち続けながらも、ふと心が揺れた。「元の世界に戻れるのか、それとも…」
ライアンも一瞬、震える手で盾を握りしめた。「俺がもっと強ければ、みんなを守れるのに…」
その時、ヴィクトールの力強い声が響いた。「お前たち!迷いを捨てろ。ここでお前らの力が試されているんだ。生き抜きたいなら、今以上の力を出すんだ!」
その言葉が、勇者たちの心に火を灯した。彼らは自らの不安を振り払い、全力で魔物に立ち向かう決意を新たにする。
その後、次々と押し寄せる魔物たちを打ち倒し、ようやく襲撃が収まった。周囲に静寂が戻り、彼らは息を切らしながら互いを見回した。
「やったな…」カインがかすかに笑みを浮かべると、シルビアも安堵の息をつき、「これが…魔界の試練か…」と呟いた。
ヴィクトールが彼らの前に立ち、満足そうに頷いた。「お前たち、よくやった。まだ未熟だが、その覚悟は悪くない。だが、これが始まりに過ぎないことを忘れるな。」
その言葉に、勇者たちは再び気を引き締め、魔界での試練がさらに続く覚悟を固めたのだった。
勇者召喚で呼び出された5人の勇者、魔界に飛ばされる @ikkyu33
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