凹凸
暗黒の大地をしばらく進んだ後、勇者たちはひどい疲労感と苛立ちに苛まれていた。足元は凸凹とした岩が続き、時折吹き付ける冷たい風が肌を刺し、まるで彼らの意志を試すかのようだった。
「…もう限界だわ。このまま歩き続けるなんて無茶だ。」エレナが足を止め、息を切らしながら言った。
「だが、ここで立ち止まるわけにはいかない。こんな開けた場所で待ってたら、また魔物が襲ってくるかもしれないぞ。」レオが苛立った口調で返す。
「それは分かってる。でも、今の状態で進んだって、まともに戦えないかもしれないのよ。」エレナが眉をひそめて反論する。
「…おいおい、少し落ち着けよ。今、争っても仕方ないだろ?」ライアンが二人の間に割って入ろうとするが、緊張は収まらなかった。
「エレナの言うことも一理ある。確かに疲れてはいるが、休む場所がなければこの先も危険が増すだけだ。」カインが冷静に分析するが、その声には若干の苛立ちが含まれていた。
ソフィアも苦しそうな顔で静かに口を開いた。「でも、レオも言う通り、今ここで立ち止まるのは危険。せめてもう少し進んで、せめて岩陰か何かの遮蔽物があるところまで行けたら…」
全員の意見が交錯し、しばらく言い争いが続く。その場に漂う緊張がピークに達しようとしたその時、突然、遠くからかすかな風音に混じって、低い唸り声のような音が響いてきた。
「…この音、なんだ?」ライアンが耳をすませる。
レオも音の方角に顔を向け、険しい表情を浮かべた。「…岩が密集している区域がある。もしかしたら、あそこなら隠れられるかもしれない。」
「行くしかないかもね。」エレナが同意し、他のメンバーも小さく頷く。
疲労感を振り払い、音のする方へ足を進める。途中、レオが先頭に立ち、仲間たちを振り返ることなく険しい道を進んでいった。しばらくすると、岩が重なり合い、まるで天然の洞窟のように暗く陰が生まれる場所が見えてきた。
「ここなら少しは安全かもしれない。」レオが息を切らしながらも言い、全員がその場に腰を下ろした。
洞窟のような場所に集まると、張り詰めていた空気も少し和らぎ、全員が静かに呼吸を整える。
「…ごめんね、さっきは。」エレナがぽつりと呟き、隣のレオに視線を送る。
「いや、俺こそ苛立ってた。互いに消耗してる時こそ、冷静になるべきだったな。」レオが少し照れくさそうに笑った。
「ふふ、これで一件落着か?」ライアンが冗談めかして言い、全員が少しだけ笑顔を見せる。
小さな対立を乗り越え、全員の間に再び連帯感が生まれる。彼らはこの魔界の過酷な環境の中でも、支え合いながら生き延びるための信頼を再確認したのだった。
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