ホームレス天使は人間社会でゴミ拾いを極めました
@takashi-y
ホームレス天使は人間社会でゴミ拾いを極めました
ここは天界だ。ある底辺天使が公園で清掃をしていた。
彼女は毎日の公園清掃で天界に奉仕している。最近までは平穏で充実した日々が続いていた。
彼女は唯一の保有スキルである材料鑑定スキルを活かし、ゴミを材料別に分別してまとめる。一度見たり触れたりしたことのある材料は、瞬間的に感知して判別できるスキルだ。ゴミの分別の役に立つ。しかし、これだけでは、戦闘力がなく、評価されない。最近の天界情勢の役には立てないからだ。
近頃、悪魔軍による不法投棄が横行し環境破壊が続いている。
悪魔がゴミを捨てにやってきた。
「おい!お前、ゴミ捨ての邪魔だ。」
「不法投棄は迷惑ですよ!今すぐやめなさい!」
「うるさい!二度とゴミ拾いできなくしてやるよ!」
天使は袋に入れられ、誘拐された。
しばらくして、袋ごと投げ捨てられる。
天使は衝撃で気を失った。
しばらくたった……
「おい!嬢ちゃん大丈夫か?」
天使は声をかけられ目を覚ました。
「ここはどこですか?」
「ここは俺が住む橋の下だ。俺はまあ、ホームレスだよ。あんた、捨てられてた袋の中から出てきたから、びっくりしたぜ。」
「助けてくれてありがとうございます。ここは人間の世界なんですね。初めて来ました。」
「はっ?何言ってるか分かんないけど、とりあえず休んでけ。」
天使は、捨てられた橋の下で人間のホームレス達と出会った。
少しの間、彼らの習性を観察していると平和的な種族だと分かる。
畑で作った野菜を仲間に配ったり、みんなで焚き火を囲んで、彼らにとっては貴重だという酒を分け合ったりする姿を見た。
今、戻ったところで悪魔軍の猛威には太刀打ちできない。
とりあえず、ホームレス達と共同生活しながら、天界に復帰するチャンスを伺うことにした。
ここに住むホームレスの社会では、ゴミ拾いのスキルが収入につながる。売却できる材料を見極めてリサイクル業者に売るという。
天使は材料鑑定スキルを活かして、ゴミ拾いを無双した。不法投棄されているゴミを見つけては瞬間的に価値のある材料を選び出す。
ホームレス仲間からスキルが重宝される。天使が分別したゴミは、みんなで分けあった。
「私はこの土地に不慣れなもので。いつも、お世話になっています。皆さんのお役に立てて幸いです。」
「嬢ちゃん、どうやったらこんな魔法みたいなことができるんだ?」
「低レベルなスキルですよ。私の故郷では大したものではありません。」
彼女は人間社会での居場所を得て、穏やかな日々を過ごす。
同じ頃、天界は悪魔軍の不法投棄のせいでゴミが溢れ返り、ついに戦争に発展していた。
橋の下に、見慣れない少女が訪ねて来る。捜索に来た仲間の天使だ。
「やっと見つけたよ。天界に戻ろう!今、私達の故郷はピンチなんだ。ゴミに汚染されてる。天界は悪魔軍との戦争になったよ。」
「分かりました。戻ります。どうしたらいいですか?」
「貴重な物を回収して欲しいんだ。以前、君が公園の池の中で偶然拾ってくれた指輪だよ。実は、長い事無くなっていた天界の支配を司る指輪だったんだ。この戦争で一旦は、悪魔軍に奪われたんだけど、今は奴らが逃げるときに捨てたゴミに埋もれているはず。」
天使は再び天界に復帰する。
間もなく、彼女のスキルが活かされ、無事に指輪が発見された。天界は支配を取り戻し、悪魔軍を退ける。
天界に平和がもたらされた。
仲間は言った。
「戻ってきてくれて助かった。君のスキルは過小評価されてたね。平和を取り戻してくれてありがとう。君の待遇を改善する話が出てるし、一緒に天界を盛り上げていこうよ!」
「ありがたい話ですけど、私はもっと人間社会を知りたくなってきました。彼らはとても興味深いです。また、橋の下に戻って、人間と生活します。」
天使は戻ってきた。
「嬢ちゃん、しばらく見なかったな。大丈夫か?」
「はい!今日はボランティア活動に参加します。川向うの公園にゴミ拾いに行きますよ。」
天使は公園で清掃活動に精を出した。
池の中に入って底のゴミをさらっていると、指輪を発見した。
以前にも天界でこんな経験をしたのを思い出した。
公園の清掃をやって人間社会に貢献している。天界のときと同じように充実しているな。何気ない日常のようで実は貴重な瞬間を経験しているんだ。
彼女は天界でも人間社会でも同じように、平穏な日々の充実が尊いことに気付く。
彼女は得意のゴミの分別を始めた……
ホームレス天使は人間社会でゴミ拾いを極めました @takashi-y
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