第11話 疑惑は深まった
「樫谷君、ちょっといいかしら」
学校でいきなり声をかけてきたのは、学級委員長の島野愛友利だ。
かつて、そらと成績のライバルでもあった委員長。
ちょっと険しい顔で、話しかけてくる。
「な、なにかな委員長さん」
「ちょっと、従妹の樫谷さんの事について聞きたいんだけど」
ちょっとヤバい雰囲気だった。
すかさず、蓮姫が間に入る。
「ど、どうしたの委員長。何かあるなら私も聞くよ!」
「悪いけど、成績が真ん中以下の人とは話したくないの」
蓮姫は、委員長を助走つけて殴ろうとした。
そらが、その暴走を止める。
「落ち着いて蓮姫!島野さん、僕の従妹について、何が聞きたいの?」
「ええ。あれだけの事故に遭ったのに、今も生きてるのが不思議なのよね」
「・・・そ、そうだね。奇跡的だったよ」
「樫谷君。あなた、本当に樫谷さんの従弟なのよね?」
「そ、そうだけど」
「・・・今、樫谷さんはどこでどうしてるの?」
「それは・・・祖父の家で療養してるよ」
「あと、なぜ樫谷君も下の名前が同じなの?」
「それは、父さんが決めた名前が、たまたま同じだっただけだよ」
「ふ~ん、そう。そんな偶然あるのね。私はてっきり、あなたが樫谷さんじゃないかって疑ってたのよ」
さすが委員長。
勘の鋭さが半端ないって。
そらと蓮姫は、思わず顔が真っ青になった。
「そ、そんな事あるわけないでしょ。嫌だなぁ、委員長さん」
「そ、そうだよ。そらちゃんが男の子になったなんて、そんな非常識な」
蓮姫が墓穴掘りそうで怖いが、二人は必死でごまかそうとする。
「なら、一度樫谷さんのお見舞いに行きたいと思ってるんだけど、今度連れて行ってくれない?」
「・・・えっ!?(×2)」
さすがにそれはマズい。
しかし、下手に断ると疑われる。
「ゴメン、委員長。傷が深かったから、本人としては傷が目立たなくなるまで学校の人には会いたくないんだ」
「そう。なら、傷が治ったら教えてね」
「う、うん」
委員長は去って行った。
「どうしよう、委員長が疑ってるよ・・・」
「政府に秘密にしろと言われてるからね、バレるわけにはいかないよ」
「もしバレたら、どうなるんだろ?」
「多分、学級委員で問題として挙げられるんじゃないかな」
「それ、学校のみんなに知られるって事じゃん」
「・・・やばいね」
「ね」
とりあえず、委員長には気を付けないといけない。
可能な限り、近づかない方がいいと考えた二人。
幸い、クラスも違うので、そんなに話す機会は無いはずだ。
と、思ったら
「樫谷君、一緒に帰りましょう。転校生だし、色々とあなたの事を知りたいわ」
めっちゃくちゃ近づいてきた。
出来るだけ関わらない作戦は、早くも崩れ去った。
「委員長、樫谷君は私と帰るんで、けっこうですよ」
何とか阻止しようとする蓮姫。
「安藤さん、あなたのような成績下等生は1人で帰りなさい」
蓮姫は、腕をグルグル回しながら、長州力のようなラリアットを島野にくらわせようとした。
もちろん、そらが止める。
「ゴメン、委員長。今日は蓮姫と大事な約束があるから」
と言い、ダッシュで学校を出た。
「ちくしょー、あのクソ委員長!毎度毎度、私の事をバカにしやがって!」
「やめときなよ蓮姫」
「一度ぐらいぶん殴らないと気が済まないよ!」
「ダメだよ」
「どうして!?」
「委員長、空手部の主将だよ」
「・・・やっぱり、暴力はいけないよね」
蓮姫は、平和な解決を考えることにした。
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