冬隣

(⌒-⌒; )

第1話

 最近誰かに見られている気がする。通勤途中の電車、最寄りのコンビニ、まして帰宅路までにも常に誰かに監視されているような気がして仕方がない。常に自分に焦点があったような視線はおそらく気のせいではないように思う俺は努めて気にしない振りを装った。

 もしかして俺にストーカーでもできたか? 冗談でも面白くない話だ。それとも別の何かが俺の事を見ているんだろうか。まだそっちの方が現実味を帯びている気さえした。

 気にしないと努めても実に気にしてしまう。今もこの顔をあげればその鏡に何かが写っているかもしれない。閉じられた目には闇しか見えずにそんな考えが頭を過った。しかし見上げても映るのは気の抜けた自分の顔が反射しているだけ。さすがに気のせいか。そう思い込もう。

 せっかく仕事から帰ってきて自宅にいるというのに、まだ誰かの目を意識していたら気が滅入ってしまう。そんな目を向けられるのは上司だけで十分だというのだ。


「さてそろそろ眠ろうか、あれ? なんだもう寝てたのか」


 ベッドには静かに眠る美しい女性が。有名な彫刻家が作った完璧の造形のようなその真っ白な顔は死んだように目を瞑っていた。その顔を見るとさっきまで考えていたことが吹きとんで塵になるようだった。

 俺はその華奢な身体を壊さないように、そっと腰に腕を回すと抵抗なくその体は動いた。少しだけ熱を失ったような体、眠っているときは体温が下がるというのに、こんな季節でいると風邪をひいてしまう。そのだらしなさに呆れながらも頬が緩む。そっと掛け布団を掛けてあげた。


「今夜もいい夜だね。おやすみ」


 窓から差し込む月日を僕は直視できない。そのベランダからはさっきよりも強烈な視線が降り注いでいたのを無視して目を瞑った

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