第14話 悲劇の連鎖
スマホで調べると、「俺」が死んだ時の記事はすぐに出てきた。
世界戦の直前に選手が事故死って世間一般でも衝撃だったみたいで、悲報を伝える記事はスポーツ新聞以外からも出ていた。
それなりにコメントも寄せられていて、夢半ばで悲劇に見舞われた「俺」を惜しむ書き込みが多数あった。まあ、正直に言えば生きているうちに応援してほしかったんだけどね。
やっぱり「俺」はトラックに轢かれて即死だった。
不幸中の幸いか、死体の損傷はそこまでひどくなかったらしい。ただ、打ちどころが悪かった。
その時の場面を思い出そうとしてみる。
気持ち悪くなったので、すぐにやめた。なんか、触れてはいけないものに触れてしまった気がする。
コメントを眺めていると、なんか気になるものが目についた。
「信じられない……。対戦相手まで交通事故死なんて呪われているとしか思えない」
――ん、これって「あいつ」も事故ったってこと?
そういえば違う場所でもボクサーが事故ったっていう記事がチラっと見えたような……。
調べてみると、その記事もすぐに見つかった。
『世界戦に出るはずだったボクサー。両者ともに交通事故で死亡』
ゴシック体のでかい文字で、衝撃的な事件を伝えている。
「……嘘でしょ?」
幼少期からのライバルでもあったケン。
あいつが、世界戦直前に事故死したニュースがあった。
それも「俺」が死んだのとほぼ同時。
そんなことってあるの?
いくら昔からのライバルとはいえ、こんなところまでシンクロしなくてもいいのに。
我ながらそんなことを思った。
世界戦を闘うはずだった二人が同時に事故死したことで、興行そのものが中止になっていた。メインでなかった人たちの試合もなくなったから、こんなところで死んで申し訳なかったなと思った。
記事のタイトルには「呪われた世界戦」なんて書かれていたけど、まさにその通りだと思う。こんなことがあったら呪いだとか祟りとかでないと納得がいかない。
そうか、ケンも死んじゃったのか。
「俺」がリュウであいつがケン。
だからメディアでは「リュウケン対決」なんて言われて面白がっていたけど、その決着は事故で叶わずと。
……でも、そうなると、あいつも女神に会っているのかな?
死んで間もない時の記憶が蘇ってくる。
たしか、女神には「西欧諸国に生まれた超絶美少女の王族か、アイドル並みにかわいい美少女JK」を選べと言われた。
後者は「俺」がとった。
ということは、ケンはどこかで王女様でもやっているのか。
想像したらちょっと笑えてきた。
あたしの前世もアレだけど、あいつが王女様っていうのは完全にギャグでしかない。
まあ、死んでもタダでは転ばない感じの奴だったし、どこかで元気にしているでしょう。
遠い空を眺めて、かつてのライバルと再会出来ることを願った。
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