1シーズン 第三話 孤独な殺人者
被害者である成田の彼女、百美の元を訪れた新田は一つの質問を切り出した。
「え~この学校の美術を担当していた成田徹也先生がお亡くなりになりました。被害者とお付き合いしていたそうですが、彼が殺害されるようなこと、心当たりありませんか?」
新田の質問に百美は返答する。
「確かに徹也とは職場恋愛してました、そのことは本当にダメだったと思います。でも、私は徹也を殺したりなんかしません。まさか、私が犯人だって疑われてます?」
訝しげな表情で詰め寄る百美に新田は少々慌てながら
「いやいや、これはあくまで被害者と接点があった方への聞き込みですからお気になさらず。まぁ、自分自身の大切な人が亡くなってすぐこういう聴取はお辛いと思いますが、被害者に関する重要なことですので聞き流す程度に耳には入れておいてください。」
不服そうな表情を見せながらも百美は頷いた。新田は続ける。
「被害者はですね、職員室で亡くなっていました。死因はコーヒーの中に混ざっていた"塩酸"を摂取してしまったがための毒物による中毒死です。死亡推定時刻は昨夜の十時五十分です。その頃はどこで何をされていましたか?」
百美はスピーディーに返答する。
「昨日はいつもより早い十時十分くらいに仕事が終わったので、最近よく行ってるレンタル屋に寄り道して映画を一本レンタルして帰りました。」
新田は質問で返す。
「家に着いたのは何時頃?」
百美は答える。
「十時三十分頃かしら?」
「普段の通勤方法は?」
「自転車ですけど」
「では通勤時間は片道二十分程度ですね?」
「そうですけど。」
百美は溜まっていた苛立ちを新田にぶつけた。
「ねぇ、これは本当に聞き込み?まるで私が怪しいかのような感じで聞いてくるけど、これは尋問かしら?」
またも新田は慌てた様子で
「いえいえ、さっきも言いましたがこれはあくまで聞き込みです。関係者全員にこういった聞き込みをしているので、疑ってるわけではありません、ご安心ください。」
安心したのか呆れたのか百美は
「そう。もう私この後授業がありますので、失礼します。」
と言って去ろうとするが、新田は引き留める。
「ちょっと待ってください!最後にひとつだけ質問よろしいですか?」
百美は許可した。
「あなた、以前は車で通勤していたそうですが、最近自転車通勤に変えたそうですね。それはどうしてですか?」
百美は少し嫌なことを思い出したのか、さっきよりも返事が遅くなった。
「それは…そうね。私、ある日車で通勤してたんだけど、左折する時に巻き込み確認を忘れちゃって後ろから直進してきたバイクと衝突しかけたの。それがトラウマになって以来、車には一切乗らなくなったの。これで満足?」
新田は笑みを見せながら、
「えぇ、大満足です。ありがとうございました。」と頷いた。そうして百美は教室へと向かった。新田は隣で一連のやり取りを見ていた北山にボソッと呟いた。
「彼女、怪しいね。」
第四話へ続く
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