第21話【ダンジョン】主犯【見学会】

ドカン! バキン! ベチン!


10体の異形の触腕が展開された聖封セイクリッドシールによって防がれる。


「何ッ!?」

「どういうことだ!」

「聖封だと!?」


驚くテロリストたち。


「良かった。まだ死んで無かった。――ッ。大治癒グレーターヒール


異形の攻撃の合間に致命傷を負った職員の下に移動していたオレは2人に大治癒を行使する。

追撃されても困るのでに聖封を使用し保護しておく。


「さて、罪のない子供たちを手に掛けようとした暴挙。何をもって償いますか?」


立ち上がったオレは案内役を視界へ納める。


「なんだ! コイツはッ!?」

「何時の間に?」

「白肌に白髪……、赤い瞳――そんな、まさかッ!?」


オレの姿を見た案内役が悲鳴に似た声を上げた。


「――そ、其を開けよ。走査スキャン。――ヒッ!? れ、レベル9妖精バンシー

「じゅ、純白のよ、妖精……」

「死の前振れだと!?」

「ホワイトバンシー……」

「ダンジョンの白い悪魔!?」

「な? 都市伝説じゃなかったのかよ!?」


オレの出現に動揺するテロリスト。

先ほどまでの威勢は何処へやらだ。

まったく、その程度で怖気づくくらいなら最初からこんな選択をしなければ良いものを……。

というか何か異名が増えてないか? 気のせいだろうか?


「けッ! ど、どうせレベル9だ。この数なら負ける筈がねぇ」

「お、おう! 殺っちまえ!!」


『『『『『シャァァァッ!!』』』』』


10体の異形が一斉にオレへ顔を向ける。

直後、20本の触腕がオレへ殺到。


「――ッ。縮地ショートムーブ


縮地を使って上へ移動。

オレの居た場所に無数の触腕が着弾し土煙が上がっていた。


「おし!」

「やったか!?」

「さすがにあれだけの攻撃なら!」

「レベル9じゃ挽肉ミンチだぜよ!」


「残念。それはフラグだよ。――ッ。土槍アースランス


大地から出現した土槍がテロリスト10人を串刺しにする。


「あがッ!?」

「ぎゃあ!!」

「――ッ!?」

「ふぐッ!?」

「あへッ!?」


「――ッ。炎槍ファイアランス


オレは滞空位置から10本の炎槍を同時発射しテロリストを灰も残さず焼却する。

残骸が残らないと後で怒られそうな気もするが、今回ばかりは致し方ない。

流石に何時ものように頭部だけ破壊するのは中学生にはトラウマものだ。

TPOへ配慮したということにしておこう。


「な!? そ、そんなッ!? 一瞬で!?」


召喚者が倒されたことで異形たちが消滅する。

残ったのは案内役の主犯1人。


「ヒィッ!?」


「――ッ。呪鎖カースチェイン


「なッ!? あああッ!?」

「もうあなただけですよ。バックも含めここで洗い浚い吐いてもらいましょうか」

「ふん。誰が――ぎゃぁぁぁッ!?」


頭を掴んだ手に力を入れる。

ミシミシと頭蓋骨が軋み案内役が悲鳴を上げた。


「い、言う。言うからぁあああぁ!!」

「なら吐いてもらいましょうか」


パッと手を離す。


「わ、私はッ――あぇぺ」


案内役の足元に紫の魔法陣が出現するとその肉体が不自然に歪み――パンッ。という破裂音と同時に真っ赤な飛沫が舞った。


「あッ……」


現れたのは異形――召喚獣サモン・クリーチャー!?


「チッ。体内に仕込まれていた!? 機密漏洩防止……」


『キシャァァァッ!!』


4本腕から繰り出される触腕を回避。

ふむ。さっきの奴らに比べれば高レベルか。

でも、その程度じゃねぇ。


「――ッ。風陣ウィンドサークル


『ギャァァァッ!?』


風陣の中で風の刃に細切れにされた異形が消滅する。


「さて……」


振り向いた先には怯える中学生たち。

と、意識が戻ったのかポカンとオレを見ている職員2人。

職員の聖封を解除する。


「すまない」

「恩に着ます」

「いえ。それより本部へ連絡を。彼らの護衛を呼んでください」

「わかりました」


端末を取り出して連絡をしようとする職員の女性。


「え? あれ?? 通じない?」

「どういうことだね」


何時の間にかオレの傍に来ていた男の職員が外へ連絡を取ろうとする職員へ話かける。


と――。


――キィィィン!


男の職員が取り出した何かがオレのシールドに阻まれた。


「なッ!?」

「なるほど。寄生型の召喚獣。ふふふ。まさか気づいていなかったとでも?」

「ば、馬鹿なッ!」


脱出アイテムの無効化ロック、通信妨害、監視映像の上書き、そこまで用意周到に行動していたのに、いざ自分の身に危害が加えられたらすぐに自白しようとした案内役。

直後の異形化による口封じ。

あんな上手いタイミングでトントン拍子に事が進むわけがない。

つまりは、もう一人主犯がいるということ。

そして、治癒したオレだから分かる。

致命傷に見せかけて男の方は急所を外してあったのだ。


「――ッ。呪怨グラッジ

「や、やめッ――」


這い出た怨霊は職員の男に纏わりつき行動を完全に封じる。


「――ッ。走査スキャン

「ピギャァァァッ!!」


オレは職員の頭を掴むと躊躇いなく走査を開始。

情報を直接吸い出していく。


「ふむ。お仕事完了。っと。――あ……」


目の前の出来事に女性職員さんが気絶していた。


「あー。まぁ、いいか。こっちの方が都合が良いし。――転送テレポート


オレは転送で子供たちと職員をダンジョン外のポータルエリアへと帰還させた。

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