第6話 事後処理
「う、嘘だろ……」
起きたら15時だった。
二度寝分を加味して10時にスマホのアラームをセットしたはずなのに、何故かスマホはマナーモードになっていた。
何をやってしまったのかは分からないが、起きてしまった事だけははっきりしていた。
まぁ、ただの寝坊なのだが……。
スマホを見る。
数件の着信表示。
師匠からではない。
だが、お仕事関係の人物だ。
「うあー。これ絶対報告書の件じゃん」
とりあえず、スマホをベッドへ放り投げて台所へ。
ケトルのスイッチをオン!
洗面所で顔を洗い眠気を落とす。
服は……、寝るときの格好のままだが今日はもう出かけることもないし着替えはいいや。
台所へ戻りインスタントのカフェオレを淹れて、冷蔵庫からクロワッサンを取り出し、リビングへ。
テーブルの上に置かれたタブレット端末を起動してキーボードを繋ぐ。
これで準備完了。
「あつッ」
カフェオレを口に含んだら思ったより熱かった。
ふぅーふぅー。と息を吹きかけてちびちびと飲む。
「寝起きのカフェオレ
カフェオレを啜り、クロワッサンを咥えながらカタカタとキーボードを叩いて報告書を書いていく。
一昔前と違って今は音声入力でも報告書は作成できるが、個人的にタイプするのが好きなのでキーボードを使っている。
ただ最近はキーボードのラインナップも少なくなって淘汰されてきた感はあるが……。
いや。まだまだ現役でやってくれる筈だ。
~!! ~!! ~!!
なんだかスマホがブルブルしている気がするが、無視を決め込む。
どうせ催促だろう。
報告書は要点をまとめて簡潔に。
まずは時系列。
それから実行犯の構成――と言っても問答無用でぶっ殺してしまったのでリーダー格以外はうろ覚えだが。
ま、リーダーっぽいのから抜き取った記憶があるから問題無い。
後は被害者の構成。
こちらも最初に
しかし、脱出アイテムの
そもそも脱出アイテムの
このままだと安心安全――ただし時々死ぬ――のダンジョン神話が崩壊してしまいかねないのではないだろうか?
一通り作成したところでダンジョン管理省の公開データベースへアクセスする。
登録されているクラン情報から昨日事件を起こしたクランを検索。
「これかな」
該当クランを見つけたのでタップして詳細を確認。
なお、クラン情報は毎年の更新が義務付けられているのでほぼ最新だ。
「ふむふむ。設立から10年。規模は中規模だがメンバーレベルは高め。資産状況も悪くない。――っと、こいつだな」
最後にぶっ殺したプレイヤーは、取締役の処に顔写真付きで名前が掲載されていた。
ついで、リーダー格から抜き取った記憶と他役員の顔写真を照合していく。
今回の事件。原因はなんてことは無い、ただの内部抗争だ。
度重なるお台場ダンジョンの
「下種め……」
どちらにせよ擁護は出来ない。
自分の都合で罪のないプレイヤーの命を使い潰そうとしたのだから……。
「メール送信。完了っと」
報告書をメールで師匠へ送信。
次いでだからBCCで着信履歴の人物にも送っておく。
~!! ~!! ~!!
不意にスマホがブルブルと震え出した。
噂をすればなんとやら。だ。
面倒だが仕方ない。
耳を塞いで、足で応答をポチっとした直後――
『こらー!!』
いきなり大音量で怒声が響いた。
『電話にはちゃんと出なさいって前に言ったよね!?』
「良いじゃないですか。報告書送ったんだから」
『そういう問題じゃない!』
散々無視したのでどうやらお怒りらしい。
「はぁ……。そんなに怒ると眉間に小皺が増えますよ」
『ん? 今何か言ったかな?』
「いいえ。何も?」
『ちょっと。語尾が疑問形になってなかった?』
「いえいえ」
『はぁ……。まぁいいわ。とりあえず、昨日はお疲れ様。後はこちらで引き継ぎます』
「よろしくお願いします。それより御宅のコンプライアンスどうなってるんです?」
『うっ……。それについては調査中。どうしても根が深いのよ』
歯噛みするような声。
どうやら痛い処をついてしまったようだ。
「すみません。忘れてください。でも藪をつつくなら十分気を付けてくださいよ。外では助力なんて出来ないんで」
『何? 気を使ってくれているの?』
「人並みには」
『そう……。で、なんで電話に出なかったのかしら?』
なんだよ。良い感じで終われそうだったのに蒸し返すんかい!?
「寝坊です。朝弱いんですよ。後、報告書を書いてました」
『まったく。マイペースが過ぎるわ』
「B型ですからねぇ」
単に面倒で出たくなかったとも言うがな。ハハハ。
その後、またガミガミとお説教されてしまった。
というか途中から仕事の愚痴の話になっていたけど、1時間くらい電話の相手をしてから解放された。
「ふぅ。なんか疲れた。不貞寝でもするか」
うーん。お布団暖かい。最高ぅ。むにゃむにゃ……。
そして、再び眠りについた。
正直、寝すぎた。
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