第5話 退魔師の狙い
「
「化け物はどんなやつだった?」
「……バカでっかいカニだっちゃ! トラックと同じぐらい!」
一瞬の間の後、瑠璃亜は弾かれたような勢いで答えた。
「そんなに!」
「
凛はここで、先ほど聴いた円香らしき少女の悲鳴と、木々が倒れる音を思い起こす。
「――助けに行かなきゃ!」
凛はこの林まで一緒に駆けて来た大男――譲悟の顔を見上げてそう言った。
しかし、譲悟は凛の言葉にすぐに反応することはなく、新たな
「……妖怪退治はやらないんですか?」
「俺が、か? なんだ、ついて来てほしいのか?」
譲悟は煙草の煙を吹かしてから、意外そうに問い返した。
凛は譲悟の薄情な態度に
(人の命が掛かってるって言うのに……! ここまで走って来ておいて何なのよ、この人!)
「
「化け物を封じるため、かな」
怒りを押し殺したような凛の問いに、譲悟はあくまで淡々と答えた。
「だったら――」
更に詰め寄ろうとする凛の目の前に、譲悟は黒い革手袋に包まれた右手で人差し指を立てた。
「
「?」
譲悟の語る言葉は、凛にとっては謎めいていた。
(〝ヨーリョク〟とか〝ジョーキューカイ〟とかこの人、何言ってるのよ)
ただ一つはっきりしたことは、この
「……じゃあ、見殺しにするって言うんですか!?」
凛の非難めいた叫びを、譲悟は首を縦に振って肯定した。
「そうだな。
譲悟のその
――最初から、見捨てられていた。
凛はその事実を知り、目の前が真っ暗になったように感じた。
しかし、一拍遅れて凛の胸中でふつふつと
なんだそれは。
たかが祠一つ壊したぐらいで、なぜ化け物に追い回されて死ななければならない。
しかも、自分に関しては突き飛ばされて祠にぶつかっただけで、巻き添えのようなものではないか。
――そんな思いが、凛の脳内でぐるぐると渦巻いた。
この〝自称〟
偉そうにご高説を
……ふざけるな。
怒りに燃える凛の藍色の
「……この、人でなし!」
凛の声音は先ほどよりも一段低く、鋭いものだったが、譲悟は涼しい顔で肩を
「悪いのは、祠を壊したお前らさ」
――ぶちん。
譲悟の軽薄な態度を目前にして、凛の中で何かが切れる音がした。
凛はドサッと荷物をその場に下ろし、譲悟から顔を背けて先ほど少女の悲鳴が上がった方へ足を向けた。
今にも凛が走り出そうとしたそのとき、彼女の背中に〝自称〟霊能探偵が声を掛ける。
「……おい、どうする気だ?」
ゆっくりと譲悟を振り返った凛は、
「ちょっと、クラスメートの様子を見てきます。今ごろ一人で怖い思いをしてるでしょうから。――別に逃げたりしませんので、ご心配なく!」
凛はそれを言い終えるや否や
譲悟はそんな小さな少女の背を、煙草の残りを吸うのも忘れて
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