第4話 囚われた少女たち
(――おじさん、足速っ!)
二人は凛の通う中学校を通り過ぎ、畑の間に伸びる道路を更に北へと走った。
譲悟の後を追う凛は、どこかから
ほどなくして、彼女は道路の脇で車が炎上していることに気づいた。その車は、まるで何かに上から押し潰されたようにひしゃげていた。
「化け物の
前を走る譲悟が息一つ乱さずに発した言葉は、不思議と凛の耳に明瞭に届いた。
(なんで、そんなことわかるのよっ)
凛の胸中の疑問に答える者はいなかった。
二人はその後も走り続け、やがて
(――これも、化け物の
凛はその光景からまだ見ぬ怪物の大きさと凶暴さを想像し、
化け物が通った跡と見られる場所では、多くの立木が
譲悟は長い足で軽やかに倒木を
ややあって、譲悟はようやくペースを緩めた。進路を変えた彼の行く先を見て、凛は人の姿を発見する。
「あ、あれ……!」
ある立木に寄り掛かるようにして、二人の少女が座り込んでいた。動きはなく、ぐったりとしているようだ。譲悟の後を追って彼女らに近づいた凛は、その二人が自分のクラスメートであることを認識した。
「こいつらが、さっき言ってた連中か?」
「は、はい……」
後ろを振り返って問い掛けた譲悟に対し、凛は走り続けて荒くなった呼吸を落ち着かせながら
凛と同じ中学の制服に身を包んだ二人の少女――中沢
「な、何なの、これ……」
凛は
二人の全身には、どろりと赤く濁った泡のようなものが
「おい、
凛が赤泡に触れる寸前、譲悟がそれを
「そいつはおそらく化け物のマーキングだ。無害な可能性もあるが、呪いの媒介になってもおかしくはない」
「うえっ」
譲悟からそんな説明を聞いた凛は嫌そうな声を上げ、慌てて伸ばしていた手を引っ込めた。言葉の詳しい意味はわからなかったが、とにかく良くないものらしい。
「中沢さん! 川島さん! 聞こえてたら返事をして!」
「…………うぅっ……」
代わりに凛が大声で二人の苗字を呼ぶと、手前側にいた瑠璃亜の方がゆっくりと反応した。
「……ひっ! ……な、なんだ。転校生か」
目を開けた瑠璃亜は、大柄な譲悟の姿を見ると怯えたような声を上げた。が、すぐにその手前にいた凛に気づいた。
――転校生。そう呼ばれて凛の胸がちくりと痛む。転校して三か月ほど経つが、凛が瑠璃亜や
瑠璃亜は身を起こすため、手足を動かそうとする。しかし、その動きは全身を覆う粘度の高い赤泡によって
「……だらずがっ! 何なん、この泡ぁ!」
瑠璃亜は
「……ねえ、何があったか教えてくれる?」
凛が控えめな態度で
「ん? ……あ、うん。その前に、この泡なんとかしてくれん? 動けんのよ」
「それは……」
瑠璃亜に頼まれ、凛は
「っつうか、誰よ? そのおっちゃん」
瑠璃亜の疑問は、見知らぬ
「もう一人のクラスメートってのはどこにいる?」
それは単純な数の確認だった。凛の先ほどの言葉では、
問われた瑠璃亜の顔色が変わった。
「さいな! 円香が、まだあのバケモンに追われとるっちゃ!」
瑠璃亜の言葉が終わるが早いか、林の奥から
凛は全身に寒気を感じた。まるで、
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