第2話 祠を壊した者たち
「ベソベソ泣きながら何もせず膝を抱えて死ぬか、生き
〝霊能探偵〟を名乗る不審な大男、
――結局、死ぬんじゃない!
それはあまりに理不尽な宣告だった。
「死ぬ、しかないんですか……?」
だから、凛の口調に大男――譲悟を責めるようなトーンが入ったのは無理もないことだった。
譲悟はそんな凛の疑問を、煙草の紫煙をくゆらせながら
「なんだ、生きたいのか?」
「えっ」
何を当たり前のことを――。凛はそう思ったが、譲悟は不思議そうに目を丸くしていた。
「生きていれば、つらいこと苦しいこともいっぱいあるだろう。そりゃあ、化け物に殺されるのは嫌だろうが、苦痛を和らげる
「――――」
譲悟のそんな言葉に、凛は息を
未解決の航空機事故で両親を亡くした凛が、母方の祖父母に引き取られて転校したのは昨春のことだった。
『あの
結果として、クラスで大きな存在感を持つ女子グループに目をつけられ、陰湿ないじめを受けることになった。岡部
凛が
昨日、学校行事として行われた遠足。その帰りがけ、凛は円香らに強要されて、正規のルートを外れてその祠の近くまで行くことになった。
そこで
『ヤバっ!
円香たち三人は、壊れた祠のただ中に倒れた凛を指差し、ケラケラと笑った。
この一件に限らず、凛は彼女たち三人から様々な形で精神的・肉体的な苦痛を与えられていた。
だから、
譲悟の
「嬢ちゃんが望むなら、苦痛を和らげる
譲悟の言葉はまるで、悪魔の
「私は……」
凛が何かを答えようとしたそのときだった。
譲悟が身に
急に北の方角を振り返った譲悟は、その先のある一地点を見据え、眉根を寄せて細い目を更に鋭くした。
「? 何か――」
「嬢ちゃん。祠を壊したとき、ひょっとして他にも誰かいたか?」
雰囲気の変化を察した凛が質問するよりも早く、譲悟はあり得る可能性を凛に問うた。
「は、はい。私以外にも、三人。全員、クラスメートの女子です」
「チッ……。おそらく、それだな」
やや慌て気味に凛が答えると、譲悟は舌打ちと共に煙草を地面に弾き飛ばし、爪先で踏みつけた。
凛は譲悟の様子から、ただならぬ何事かが進行していることを察する。
「何かあったんですか?」
「ああ、最悪なことがな。……チッ、面倒だな。おい、嬢ちゃん。脚に自信はある方か?」
譲悟は
再び舌打ちをした彼は、空いた片手で朽葉色の頭髪をぼりぼりと
「はい。元は陸上部だったので」
「よし、じゃあ走るぞ。ついて来い」
「えっ? ――は、速っ!」
凛が
凛は慌てて、譲悟のその大きな背中を追って走り出した。
祠を壊した少女と長髪無精ヒゲ退魔師オジさん 卯月 幾哉 @uduki-ikuya
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