最終話

二〇二七年一月二十四日、午後五時。警察を屋敷に呼び、綺羽を無事に引き渡して、水樹たち「探偵社アネモネ」のメンバーはタントに乗り込んだ。

あれから、綺羽は喋ることも表情を崩すこともなく、大人しいものだった。他の参加者たちも、当たり障りのない会話に終始し、解散した。小雪が舞い始めた車外に目を向けて、水樹は運転手の理人に声を投げる。

「運転、気を付けてくださいね」

「お任せください。無論、車に雪対策は完全にしてありますし、安全運転で参ります」

頼もしい理人に、水樹とは正反対の位置の窓の枠に頬杖をついた陽希が、ぼんやりと問いかける。

「理人ちゃーん。あんなにも愛して、愛して、死んだあとまで愛した人の、与えてくれた愛を見誤るなんて、あり得ると思う?」

理人は極めて慎重にハンドルを切りながら答えた。

「与えるばかりに夢中になって、与えられた気になって、与えてくれたものには気づかなくなる。それが愛なのですよ」

雪は少しずつ、灰色の路面を白く染め上げていった。

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探偵たちに時間はない 探偵とホットケーキ @tanteitocake

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