第12話
春を模した柔らかな月光が降り注ぐ中、水樹たちはソメイヨシノのアーチの下を歩いた。淡いピンク色の花びらが風に揺れ、まるで天から降り注ぐシャワーのように舞い落ちてくる。枝々が絡み合い、自然が作り出したトンネルのように私を包み込む。
足元には、花びらが絨毯のように敷き詰められ、歩くたびにふわりと舞い上がった。空を見上げると、夜空と桜の花が織りなすコントラストが美しく、心が洗われるような気持ちになる。甘くてほのかにフルーティーな香りが鼻をくすぐる。その香りは、まるで春の訪れを告げるメッセージのように、心を幸福感で満たしてくれた。
「花が育ちやすいように、気温まで完璧に管理されているなんて、凄い情熱を感じます」
水樹が言うと、理人と陽希も頷いた。
するとその時、どこからか軽快なメロディが聴こえて、辺りを見回す。しかし、何も音源らしいものが見当たらなかったので、水樹は足早に、音を頼りに歩き出した。
ソメイヨシノのトンネルを抜けた先に、高さ三メートルほどの、時計が鎮座していた。白い煉瓦で作られた、その中央に文字盤と、すぐ上に穴があって、そこから一羽の鳥の模型が出入りしている。瑠璃色の羽根に白い腹の鳥だ。この鳥の出入りに合わせて軽快なメロディが流れている。
「鳩、でしょうか? 鳩時計?」
水樹がその鳥の模型を覗き込んでいると、理人が横にやって来て、「それにしては随分と青いですね」と首を捻る。確かにその通りだ。
更に反対側から、水樹を覗き込んで来た陽希が、「オオルリだよ」と言う。
「オオルリで間違いないんじゃないかな。綺麗な声で鳴くんだよ。青い鳥の代表格の一種でもあるし、日本三鳴鳥の一種とも言われているね」
その後、他の季節のエリアも見て回った。全ての花が生き生きと咲き誇っていたが、推理の目ぼしい材料はなかった。
予定の時間通りに皆が所定の地点に集まり、無事を確認したところで、この日は寝室に戻ることとなった。
危険性を少しでも減らすため、水樹と理人と陽希の三人は、この日は同室で休むことにした。
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