2-19.激突!ルメVSナギ!

「フーちゃん、素早く対応しちゃったなぁ~」


「···相手もかなりの強さだね。···最後の魔法以外は当たったら儲けものって考えだったしね」


「これでフーは明日、あのクロとの試合が確定したなー」


「あっ!そうだね。アトラちゃんは棄権になっちゃったからなぁ~」


「う~!あたいはまだやれるのに~!」


「無理言っちゃダメよ。アトラは魔力がほぼ尽きちゃってるんだから。竜気だけじゃクロって子に勝てないわよ」


「ナナマーマ!そうだけどさぁ~」



 う~ん···。アトラちゃんはやる気マンマンなんだけど、さすがに魔力が尽きた状態だったら必殺技使えないからね。試合で無理させるわけにはいかないから仕方ないよ。


 さて、クロくんの試合は不戦勝ということで試合はなく、次の試合はモンドくんを負かした謎の暗殺術を使う相手だ。この試合、あっという間に決められちゃったんだよね···。殺しちゃいないけど、文字通り瞬殺だった。ということは善戦したモンドくんはかなりの実力だってことがここで証明されたね。


 モンドくんは頑張って平常心を保とうとしているけど、気持ちは落ち込んだままだ。けどね?キミがとっても強いってのはボクはよくわかっているからね!



 さあ!次はルメちゃんと緑竜のナギちゃんの試合だ。ちなみにこれに勝った方が明日にあの謎の暗殺術を使う相手との対戦になるんだ。


 ドラゴン族同士の戦いになっちゃったね。どっちが勝つのかな?




 さあ!あたしの試合ね!相手はさっき一緒に昼食を食べた緑竜のナギちゃんだ。



「よろしくおねがいするわね!」


「はい···。こちらこそ···、よろしくお願いします···」



 話す時はこうやっておとなしすぎるんだけど···、試合が始まると人が変わっちゃうのよね···。あたしも本気で相手しないと負けるわ!



「それでは準々決勝第4試合、始め!」



 お互い魔法系だから最初は大きく間合いを取るだろうって思ってたのよ。そしたら···



「はあっ!!」



 ナギちゃんはいきなり突っ込んできたわ!?そして右手から植物のツタのようなものをあたしに向けて飛ばしてきた!



「くっ!?ヒートボディ!!」



 あたしの防御魔法のひとつ、ヒートボディをとっさに発動させた!体の表面のみを熱くして接触したものを焼くって魔法よ!



 ジューー!!



 な、なんとか体に近づいたツタっぽいのは焼き尽くしたわ···。ナギちゃんもあたしに触れたらヤケドするって気づいていったん離れたわね。危なかったわ···。


 これは防戦一方になるかもしれないわね···。じゃあ、今のうちに打てる手を打っておきましょう!



「トリプルレッドシェル!!」



 あたしの周りにカメの甲羅状の玉が3つ現れてあたしの周りをグルグル回り始めた。アキじーじが話していた『げえむ』にあった、バリアにもなりつつ放てば相手を追尾して攻撃する攻防一体の手段らしいって聞いて考えた魔法よ!緑より赤の方がいいらしいし、トゲがついたものもあるらしいけど、違いがよくわからないわ···。


 この魔法を展開したとたんにナギちゃんは警戒度を上げたようで、ものすごくにらんでいる顔になっちゃったわ。顔が怖い···。


 さて、ナギちゃんが警戒している間に次の手を打っておこう。こうなると時間と判断が勝負の決め手になりそうね。


 さっきの初手でナギちゃんはスピードがかなり速い。となるとワナ系がいいんだろうけど、あたしもナギちゃんも翼があるからあんまり意味ないのよね···。


 となると一撃必殺な魔法がいいわね!長引くとあたしが不利だわ!


 ついでに武器も必要ね!なら、ここはこれしかない!



「でてきて!ゴールデンピコピコハンマー!!」



 あたしは地面に手のひらを向けた!すると魔法陣が現れ、そこから黄金に輝く大きなハンマーが現れた!半分以上の魔力を消費しちゃうけど、今日はこの試合で終わりだからここで尽きても大丈夫よ!


 出現したゴールデンピコピコハンマーを両手で掴み、腰だめで構えた!このポーズってカッコいい!ってアトラがアニメ見て言ってたからね。あたしもマネしてみたのよ。


 ちなみにこのハンマーもアニメであったのよね〜!なんか当たったら光になって消滅しちゃうらしいけど、あたしのはただ単に黄金に光ってる柔らかハンマーよ。でも当たったら気絶しちゃう衝撃があるけどね。


 やっぱり派手だからナギちゃんは警戒してるわね!ここはどっしり構えてチャンスを伺うわよ!


 するとナギちゃんは接近戦がマズいと悟ったのか、魔法で木の弾丸を作って大量に打ち出してきたわ!



 ダダダダダダッ!



 なんとかトリプルレッドシェルのおかげで防げてるわね···。動けば照準を変えて当てに来てるわ。これはちょっとマズイかしら?


 そう思って前進を始めようとすると、着弾音がちょっと変わった事に気づいた。



 ドドドドドッ!!



 明らかに音が低くなってる!?よく見ると弾が大きくなってきていた!すると、あたしの周りに回っていたシェルがひとつ弾け飛んだ!


 マズい!物量でバリアを突破されてしまう!?さらに弾は大きくなってきて、今はこぶし3つ分ぐらいになってる!



 パッキーン!!



 さらにひとつ弾けた!さっきよりも間隔が短くなってる!?このままだとバリアが突破されるのはすぐだわ!


 あたしは一気に突っ込むことにした!これ以上は耐えられない!バリアが残ってる間に一撃叩き込む!



「はぁあああーー!!」


「がぁあああーー!!」



 もうバリアが消えかけてる!?お願い!間に合って!!



「ぺしゃんこになれーーー!!」


「弾け飛べーーーー!!」



 パッキーン!!



 バリアが弾け飛んだ!その瞬間、あたしの時間感覚がゆっくりになったのを感じたのよ···。


 あたしはバリアが弾け飛んだ直後にハンマーを振り下ろした!


 ナギちゃんは大型の木の弾丸をあたしに撃ち込んできた!もう、避けることはできない!!


 あたしの目線とナギちゃんの目線が合った。あたしは必死の目、ナギちゃんは勝った!と確信した目。


 双方の視線が激突している間にも状況は動く!


 ナギちゃんの木の弾丸が容赦なくあたしの竜気を貫通して激しくぶつかった!···もっと竜気の訓練しとけばよかったなぁ〜。


 激しい痛みをこらえつつ、ハンマーを手放さずに振り下ろしたけど···、



 ズドーーーン!!



 外しちゃった···。腕を集中的に狙われちゃったから···、腕が折れちゃったのよ···。じわじわと鈍い痛みがあたしを襲った!!



「ぐっ!?あぁあーーー!!」


「ハァッ!ハァッ!な、なんとか···、回避できた···。まさかここまで粘られるなんて···」



 あたしは急いで回復魔法をかけようとしたけど、魔力がもう尽きかけていて効果があまりなかったのよ···。


 うん···。ここまで···、ね。



「ま、まいり···、ました···」


「そこまで!!」


「わたし···、勝った···、の···?」


「え、ええ。そうよ···。ぐぅっ!?つぎも···、がんばってね···」


「ルメさん!?ごめんなさい···。やり過ぎてしまいました···」


「いいのよ···。ごめんけど、はなしはあとにしてくれない?うで···、おれちゃってるから···」


「ご、ごめんなさい···」



 あたしは痛みに耐えきれず、その場で倒れてしまった···。

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