2-16.モンド、敗北する···

「うわぁ~···。アトラちゃん、思いっきり特撮もののノリでやっちゃってるね···」


「あの鎧って、コピーアキのアレだよな?よく再現したなぁ〜。よっぽどイメージが固まってんだなぁ〜」


「オレの体術も使いこなしてるなー。ただ、アレってものすごく魔力消費が大きすぎるんだけど大丈夫かー?」


「あの子の事だから後先考えずにノリでやってそうね。ちゃんと撮ってあげてるから、あとで喜ぶんじゃないかしらね?」


「···竜モードになったね。これで全力出す気だよ」


「まんま特撮ものの展開になっちゃったね···。最後は怪獣対決だよ···」


「おっ?やっぱ倒れたな。これじゃあ次の試合は無理っぽいな」


「今ズームしたら親指立てて気絶しちゃってるわ···。あの子···、大満足だったようね」


「某未来からやって来たタ◯ミネ◯ターが溶鉱炉に落ちるシーンじゃないか···。映画まで見てたんだなぁ···」



 観客は拍手喝采だったよ。迫力のあるリアルで派手な戦いだったよ。CGじゃないしね!ましてやアニメじゃないよ!ホントの事だからね!日記風小説だけどね···。


 ボクたちもいい試合を見せてもらったよ。リアルに特撮ものの撮影シーンを現場で見ちゃった気分だよ。


 レオがクロスに、リオは体術に驚き、ナナはスマホで撮影に勤しんでいたよ。


 結局、アトラちゃんはこの試合の勝者にはなったけど、試合続行不能とされちゃって準々決勝は不戦敗になっちゃったね。本人は大満足だったようだから、これで良かったと思うよ。



 さて、次はモンドくんの試合だね!果たしてどうなるのかな〜?



 アトラが担架で運ばれていったな···。ルメが回復魔法かけてたから、すぐに気がつくだろうけどな。


 すんげー試合だったな!おれも燃えたぜ!


 対戦相手は鎌を持ったオッサンだ。あんな武器は初めて見たぜ···。雰囲気からしてかなり強そうだぞ!



「昨日の試合を見せてもらいましたが、とても子どもとは思えん実力ですなあ。どうやってそこまでの強さを得たのか興味ありますね」


「パパとかにおしえてもらってるんだ。パパはおしえかたがうまいからな!」


「そうかそうか。ではお手柔らかにお願いしますよ。おっと!言い忘れていましたよ。全力で来ないと···、負けますよ?」


「···わかったぜ。だせるぜんりょく・・・・・・・・で相手するぜ!よろしくな!」



 ···何だ?雰囲気が急に変わったぞ?これは油断ならねえ相手だぞ!?



「それでは第2回戦第6試合、始め!」


「せんてひっしょーー!!」



 ヤバい雰囲気がプンプンしてやがる!おれの勘では長引くと不利だ!本当は相手の情報があんまりない中で突っ込むのは自殺行為だ。でも、今回は早期決着が最良と判断したぜ!



「そうぎ、ようこうせんせん!!」



 武器のリーチはこっちの方が長い!相手の鎌の攻撃なんてさせないぜ!まずはおれの最強技で相手の実力を見極めてやる!


 そして槍技がキマった!ノーガードで受けやがったから全部当たったぞ!


 しかし!相手はケロっとしていやがった!



「な、なぜだ!?ぜんぶあたったはずだぞ!?」


「ふふふ···、確かに当たりましたねぇ〜。それだけですが?」


「くそっ!そうぎ、はやぶさづき!!」



 槍を高速で突き出して衝撃波を放った!今度も命中したが···、



「鋭い突きでしたね〜。···こんなものですか?キミの本気は?」


「なぜだ···!?こんどもあたったぞ!?」



 おかしいぞ!?まともに受けたら気絶する威力だぜ!?まったくダメージが入らないなんて!?


 落ち着け、おれ!これは何かのワナだ!なにかしらワナに引っかかっているぞ!?一体なんだ!?


 魔法か···?幻術魔法···、邪法···、混乱魔法···。リオじーちゃんから聞いたのはこれぐらいだな。


 幻術魔法だったら相手は幻だ。でも当たった感触はあったから多分違う。


 邪法だったら真名が知られてないと普通は掛けられない。パパやじーちゃんたちが大魔王の手下にかけられた『ソウルプリズン』は簡単にはかけれないから、試合で使うようなものじゃない!


 混乱魔法···?いや、おれは正気だ!相手は目の前にいる!残像とかじゃない!ちゃんと影がある!


 わからねえ···。道場のみんなやパパやママとしか対戦してないから、知らない攻撃されたらわからねえ!どうする···?このままじゃ負けちまうぞ!



「おや?どうしました?まさかもう終わりですか···。もうちょっと楽しめると思ったのに···。仕方ありませんからすぐに終わらせましょう」


「くっ!!」



 相手はゆっくりとした動作で鎌を振り上げた!そしてブンッ!っと振ると斬撃が飛んできた!!



「あんさつぎ!そうれつざん!!」



 おれは魔力剣をすぐにしまって、腰に差していた短剣を同時に振りぬいた!斬撃を切り裂いて直撃は避けることができたが···、今度は相手を見失ってしまった!



「どこだ!?」


「後ろですよ?」


「なっ!?ひぎ、せんぷうざん!」



 とっさにおれは旋風斬を放った!周囲を切り裂く技だ!これなら···。



「はい、はずれ~。正解は実は正面にいたんですよ」


「なっ!ぐふっ!!」



 おれは相手の鎌の束の部分でみぞおちにきつい一発を受けてしまって吹っ飛んでしまった···。



「ふふふ···。まだまだ技が荒いみたいですね?まぁ、その幼さでここまで技を習得している時点でとんでもないですけどね。···相手が悪かったですね」


「ぐっ···。がはっ!く、くそっ!パパのわざみたいなのをつかいやがる···」


「なるほど、やはりそうでしたか···。キミ、もしかしてブートの里の事を知ってるね?」


「···え?」


「その反応、当たりという事でしたか。チパはお元気ですか?」


「チパ···?もしかして、ばあちゃんのおししょうさんのことか?」


「知っているんですね。で?どうなんです?」


「あったことないからしらないぜ···。パパとばあちゃんならしってるとおもうけど···」


「そうですか···。まぁ、因縁の相手でしたけどそろそろ寿命だろうなぁ~とは思ってましたがね。まさかこの大陸でその技を見るとは思いませんでしたよ。ただ···、まだまだ甘いですね。経験不足がにじみ出ていますよ?まぁ、キミが成長したらとんでもなく強くなるでしょうけどね。今は私には···、勝てません。さようなら」



 相手は鎌を振るって刃ではなく柄でおれの首を殴りつけてきた···。その衝撃でおれは気絶してしまったんだ···。

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