2-11.アトラ、竜王翔吼拳を使わざるを得ない!

 おーし!次はあたいだな!今度も鮮やかにカッコよくキメてやるぜ!


 相手はムキムキのお兄さんだな。武器は剣だ。悪人っぽくないからちょっとやりづらいな···。



「ドラゴン族のお嬢ちゃん。とんでもなく強いね。お手柔らかにお願いするよ」


「あたいはまだじぶんがつよいっておもってないけどな!まだまだちゅよい・・・・ヤツがいるしな!」


「ははは!幼いのに謙虚だな。そういう者こそ恐ろしいものよ」


「ともだちもいってたけど、これはむしゃしゅぎょーだ!おにーさん、よろしくな!」



 あいさつを交わしてると、審判の人がアナウンスし始めたぞ。



「今回の試合のオッズは···、アトラ選手が7.5倍ですね~!ドラゴン族でもお子さまは不利か!?それでは始め!」



 今回は慎重にいくぜ。相手は剣、しかも刃物だからな。どうしてもリーチの差でこっちが不利だし、いくら竜気があるっていってもじーちゃんほど強くないからな。



「おや?予選の時みたいに突っ込んでこないのか?」


「じょうだんじゃないぜ。あたいがつっこんでくるとおもってまちかまえてるだろ?」


「ほう!気づきおったか。ちびっ子なのに頭が回るな」


「なめんなよ?こうみえてもママやじーちゃんにきたえられてるからな!」


「なるほど。では、こちらからいくぞ!」



 ···来る!生半可な攻撃じゃなさそうだ。身内以外で戦うのって、今回の大会が初めてだからな。相手の攻撃が予測できねえから、いつも以上に集中しちゃうぜ!


 お兄さんはゆっくりとした足取りであたいに向かってきた!間合いは向こうが大きいから、間合いに入った瞬間に攻撃が来る!


 間合いに入る距離から離れた位置から一気に突っ込んできた!まずは突きだな!ギリギリまで引き付けたうえで左へよける!すぐにお兄さんに向けてあたいも突っ込んでいった!背後をとったぞ!背中が···、がら空きだぜ!



魔弾まだん!いっけーー!」


「ぐぅっ!?なんだと!?」



 左手をハルばーちゃんが使ってる『じゅう』って形にして親指を下げると魔力の弾が打ち出され、お兄さんの背中に当たった!体勢を崩してスキが大きいぜ!今がチャンスだ!そう思って突っ込もうとすると、



「はぁあああーー!!」


「なっ!?うわっ!!」



 お兄さんが大声を上げたと同時にあたいに衝撃波が飛んできた!なにかの魔法か!?受け身をとって衝撃を逃してすぐに立ち上がる。間合いが大きく開いてお互いに攻撃はいったん中断だ。



「やるじゃないか!弱い当たりだったが、ヒヤっとしたぞ」


「おにいさんこそ、まほうがつかえるんだな。これはもっとほんきださないとまけそうだ」


「···今のは様子見だったという事か。まぁ、それはこちらも同じだったけどな」


「だろうな。もっとおもしろくなりそうだぞ!」


「この状況で面白いか。では次はどう捌くかな?」



 こいつは強い!ちょっとあたいでは厳しいかな?でも、やれるだけやってやる!



「じゃあ、こんどはあたいからいくぜーー!」



 翼を広げて高く飛び、あたいのさいきょー技を叩き込んでやる!



「ひっさーつ!らいだーきーっくーー!!」


「その技は昨日見せてもらったぞ!当たらなければどうということはない!」



 お兄さんはあたいの必殺技を見てたか!じゃあ、うまく引っかかってくれるぞ!



「な〜んてな!」


「なに!?」



 お兄さんはもちろん避けた。そしてあたいが着地した瞬間!



 ドーーーン!



 わずかに遅れて地面に爆発が起きた!その爆発を利用してお兄さんに突撃だぁー!



「らいだーぱーーんち!!」


「くっ!」



 お兄さんは剣の腹であたいのぱんちを受け止めやがった!ただ、その代償は大きいぜ!



 パッキーーン!!



 ヘヘっ!剣を折ってやったぜ!これで攻撃方法が減ったな!



「やるな!まさか必殺技がフェイクとはな」


「あんまりつかいたくなかったけどな。まずはけんをつかえなくさせてもらったぜ!」


「···残念だが、武器がないからといって勝った気になってもらっては困るな」


「なに!?」



 次の瞬間、お兄さんが目の前から消えた!どこに行った!?


 すると、背中に衝撃を受けた!



「ガハッ!?う、うしろ!?」


「いいや、もう・・前だ」


「なっ!?ぐあっ!」



 マズい!目で追えない速さだぞ!?さっきまでは本気じゃなかったって言ってたけど、あたいの本気と差があり過ぎた!?


 しばらくの間、あたいは成すすべもなく攻撃にさらされちゃった···。ある程度は竜気で守られてるけど、痛いものは痛い!


 ズタボロにされてしまったな···。立ってるので精一杯だぜ···。



「素晴らしい根性だ。この攻撃を受けて立っていられるとはな。幼いとはいえ、ドラゴン族だから防御力が高いのか?」


「ハァ、ハァ···。ま、そういうのもあるぜ···。ひーろーは···、まけないんだぜ···。こうしてピンチになったときが···、いちばんかがやくんだーーー!!」


「···良かろう。次の一撃で終わらせるぞ。まだ幼い女の子だ。傷つかぬようにしてやる」


「おもしれえ!あたいも···、『さいごのおくのて』を···、『竜王翔吼拳りゅうおうしょうこうけん』をつかわざるをえない!」


「まだ奥の手があるだと!?面白くなってきたぞ!ぜひとも打ち破ってくれよう!」



 おっ!?どうやらあたいの超必殺技を見たいらしいな。ありがたいぜ!この技はちょっと時間がかかっちまうのが欠点だったからな。


 全身の魔力を限界まで高める!魔力を集めて超圧縮するドラゴンキャノンが撃てないから、高めるので精一杯なんだけどな。


 全身が魔力の高まりで金色に光る!そして、両手を正面に突き出して、腰だめのポーズをとる。今できるあたいの超必殺技を撃ってやるぞーー!



「いっくぜーー!りゅうおうしょうこうけーーん!!」


「これは!?ぐぬぅっ!!」



 あたいの両手から出た特大魔力砲はお兄さんに直撃した!しばらくは耐えてたけども、爆発してそれも突き破り、お兄さんは場外まで吹っ飛ばされた!



「場外!それまで!!」


「ハアッ!ハァッ!あ、ありがとうございました!まちがいなく···、あたいの竜生りゅうせいでさいきょうのあいてだったぜ···」



 全身が痛む中、ゆっくりとした足取りであたいはリングを降りた。するとルメ姉たちが駆け寄ってくれたぜ···。



「アトラ!かいふくまほうをかけるわね」


「すまねえ、ルメねえ。でも···、たのしかったぜ!」


「アトラちゃん!カッコよかったよ〜!」


「そうだぜ!ちょーひっさつわざをだすシーンはさいこうだったぞ!」


「ヘヘっ!ありがとな、フー、モンド!」



 あ〜、あたいも回復魔法覚えないといけないなぁ〜。癒しのひーろーもいるからな!

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