2-9.ちょっとしたお願い
グロー歴523年8月13日 晴れ
おはよう!昨日は格闘技大会の予選で孫たちが無事に本戦出場を決めたね!
今日からは本戦だね。今日は1回戦16試合やって、明日が2回戦8試合と準々決勝、明後日が準決勝と決勝、3位決定戦があるんだよ。孫たちはどこまで勝ち進めるかな〜?
「もちろん、優勝に決まってるぞー!」
「アンタね!?あんまり孫たちにヘタに期待させて精神的な負担をかけさせんじゃないわよ!のびのびと好きにやらせないとダメでしょ!?リナとケンの時にはそんな事一言も言わなかったでしょ!」
「そ、そうだったかー?」
「···もう歳なのね。ボケ始めてきたかぁ〜」
「まだまだ中年と言われる歳だぞー!?」
「体の歳じゃなくて頭の中の話よ!(あたしも体型がちょっと気になりだしてるけど···)」
「えっ?最後のほうが聞き取れなかったけどー?」
「うっさいわね!いいからアンタは純粋に応援してればいいの!」
「お、おう···。そうするぞー」
朝からリオはナナとケンカしてたよ···。まぁ、優勝してほしい気持ちはわかるけどね。リオは孫バカだからなぁ〜。ところでナナ?優勝ってナナ自身も言ってたよ?忘れてないかい?
「さて、今日は1回戦だね。みんな自分の力を思う存分発揮していい試合になるようにね!」
「「「「はーーい!」」」」
コロシアムでは関係者専用の出入口から入って孫たちと分かれた。ボクたちは関係者専用席で観戦だよ。
その席に向かおうとしたところ、通路で知らない人から話かけられたよ。
「失礼。あの幼い獣人とドラゴン族の親御さんとお見受けするが?」
「え、ええ。親ではなくて祖父母ですが···」
「これは失敬。優秀なお孫さんですなぁ。おっと、名乗っておりませんでしたな。私はヘンリーと申します。サバール王の側近で、警務大臣をやっております」
「えっ!?そんな偉い方がボクたち···、というか孫たちにどういった御用件です?」
「ここから先のお話はここではちょっと···。まぁ、立ち話もなんですからどうぞこちらへお越し願いますか?」
「アキ?どうするんだー?」
「リオ、とりあえず話だけでも聞いてみようか?どうするかはその後で」
「わかったぞー」
そうしてヘンリーさんの後について行くと···、大きな扉が開かれた先には貴賓室で、観覧席に王様がいたんだ!
ビックリしているボクたちを振り返って見たヘンリーさんは、王様に声をかけたよ。
「おい!連れてきたぞ」
ちょっと!?王様に向かってタメ口!?大臣なのにいいの!?
「おっと!?来てくれたか!すまんな、へーちゃん」
···王様も気安いなぁ。そう思ってると王様が立ち上がってこっちにやって来たよ!?
慌ててボクたちは礼を姿勢をしようとすると、
「あぁ、気を使わんでくれ。こちらからムリ言ってお越しいただいたのだからな。とりあえずそこのソファに座ってもらえるかな?へーちゃん!飲み物持ってきて!」
「へいへい」
ボクたちがソファに座るとヘンリーさんが飲み物をすぐに持ってきてくれた。そして王様からあいさつされたよ。
「まだお子さんの試合まで時間あるから、少し話を聞いてみたかったのだよ。私の自己紹介は不要だな?」
「はい、サバール王」
「もっと気さくに話してくれ。ここには堅苦しい事を言わない側近だけしかおらんからな。不敬罪にも問わんからな」
「はぁ···、申し遅れました。ボクはアキと言います。こちらは妻のハル、親戚のレオです。あと、リオとナナです。あと、出場してるのはボクたちの孫です」
「紹介ありがとう。···実はあなたたちの事は事前に知っているんだよ」
「えっ!?そうなんですか?」
「ボルタニア大陸のピムエム皇国のパスティー皇帝からの親書に、あなたたちがこちらに来る予定があるとあったのでな。昨日予選を勝ち残った選手の申込書の保護者の欄にあなたたちの名前があったので、こうして呼ばせてもらった次第だ」
「そうだったんですね。皇帝はどこまで伝えてるんですか?」
「詳しい事までは書いてなかったが『世界を救った
「そうですか···。その、用件は何でしょうか?」
「···ちょっとしたお願いだ。武力を貸してほしいのではなく、テスラ共和国とマクス帝国の様子を、旅のついでに見てきてもらえないか?ということだ」
「···えっ?あぁ~、よかった。てっきり戦争に力を貸してほしいとかだと思ってましたよ」
「まぁ、へーちゃん以外の大臣どもはそれが魂胆でこの大会を開いたようなものだがね。だから私はあんな宣言をして牽制したがね」
「でも、スパ···、失礼。情報を扱う部署もあると思うのですが、なぜボクたちに?」
「···これは私の勘なのだがね。マクス帝国が戦争準備をしていて緊張が高まってるという情報は、何かおかしいと思っているんだ」
「と言いますと?」
「パスティー皇帝を知ってるならご存知だろうが、うちも密偵は両国に放っておるが、その情報と一般に流れている情報が食い違っているのだ。密偵は『いたって普通の状態で、むしろ緊張状態という一般人の情報に国が戸惑っている』との事なのだ。大臣たちはこの密偵の情報が信用できない!と言ってるし、だからといってうちが『違う』とは言えんのだ。その根拠を聞かれてしまうし、逆にうちがデマを流したと思われかねんしな。やむを得ず開会式ではああ言うしかなかったがね。多少あれも問題発言かもしれんがな」
「なるほど···。そうだったんですね」
「ここを出たらどちらかの国に行くと思うのだが、どうだろうか?」
「···ボクは来月の20日にはボルタニア大陸で仕事があるので、滞在期間はあと30日程度です。両国に行けるか?そして報告にここに来れる保証はありませんが、それでもよろしければ条件付きで引き受けます」
「アキー?いいのかー?」
「リオ、戦争は避けたいしね。旅行ついでならいいかと思うけど」
「わかったぞー」
「話はまとまったな。では、戻って情報を提供していただいたら謝礼をさせてもらおう。ムリ言って済まなんだな。今日はここで試合を見ていくといいぞ」
「えっ!?そ、それは···」
「ははは!大丈夫だ。今日は他の大臣どもは試合の選手のスカウトで出払ってるし、へーちゃん以外は来ないから安心していいぞ」
「はぁ···。ではお言葉に甘えて···」
なんと、王様と一緒に観覧することになっちゃったよ···。警備の人すらいないけど···、そこまで見知らぬボクたちを信用していいのかなぁ~?
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