第2話:『物語』のプロローグ
春の花々の香りが、あたたかな風に乗って漂ってくる。
私「今年もステキな春ね。この1年も穏やかな年になると良いわね」
すると、いつも私に一番近くで寄り添うひとりの孫が、
孫A「ねぇねぇ、お婆さま?どうしてお婆さまは、いつもおキレイなの?」
と私の袖を引っ張りながら尋ねてくる。
私「ふふ。好きなヒトに愛され、幸せを感じると、女性はいつまでもキレイでいられるものなのよ」
孫A「それって、おじい様の事?」
私「そうね。おじい様もそうですし、あなたたち孫がこうして、わたくしのまわりに居てくれるから、わたくしはとっても幸せなのよ」
孫A「やったー!ねぇ、みんなー、聞いた?ワタシが居るからお婆さまは幸せなんですって!」
と、他の孫たちに向かって自慢げに、はしゃいで話す。
孫B「ちがうだろー、お婆さまはちゃんと『あなたたち孫』ってオレらの事も言っていたぞ」
孫A「いいじゃん。お婆さまの一番のお気に入りはワタシなんだもんっ」
孫C「いいや、ボクの事を一番気に入ってくれているもん!」
孫同士、言い合いを始めた。でもすぐに、
孫A「おじい様って、そんなにステキな方だったの?お婆さまみたいに、お美しい女性なら、、、他にいっぱいいいオトコがいたんじゃないの?」
舞い降りてきた桜の花びらが、私の茶に浮かぶ。
それを見つめながら、答える。
私「そうねぇ。あのヒトと見比べるような
孫B「えー、うそー。世の中、い~っぱい良い
孫C「ちょっとー、ボクも魅力ある男の子だからねー。忘れないでよねー」
孫A「いいえ、ワタシから見たら、あなた達はまだまだよ」
と、孫同士、元気にまた言い合いを始めた。
春のあたたかな日差しが、私の心もあたためる。
しばらくして、
孫A「ねぇ、お婆さま。お婆さまがそこまで大切に思うおじい様のお話をしてよ。」
孫B「そうだな。オレも気になる!どんな漢だったのか」
孫C「どんなふうに出会ったの?また昔のお話をしてよー」
ちょうど通りかかった気まぐれな風が、私たちの頭上の桜の花びらを舞い上がらせていく。私はそれを見上げ、少し昔の出来事を思い出しながら、ひと呼吸つく。
そして、再び孫たちの目を見て、答える。
私「そうね。では、まだ話していなかった、あなた達のおじい様の若き頃のお話をしましょう。ちょうど、あなた達くらいの歳の頃に出会ったのよ。あのヒトの物語として、お話をしてあげるわね」
私は近くにいた他の孫たちにも声をかけてから、そばにあった真新しい書を手に取り、開く。孫たちが集まり、桜の木の下は賑やかになる。
私「そう、これはわたくし(
私はそう言って、あのヒトの物語を語り始める。
春のやさしい風と共に、桜の花びら達は再び舞い踊り、華やかになる。
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