成長期

「あらじゃあ本当に坊や13歳だったの?」

「うん、身体測定じゃ他のは全滅だったけど身長だけ平均より高いって褒められたよ」


あれから検査したらさっさと帰ると言っていたエムエムが、全く検査する素振りも見せず、寧ろ回復したコタロー君と和気あいあいと話をしている。


私は早く帰ってくれる様にコタロー君に冷たい麦茶を出し、エムエムには熱いお茶を出すが全く効果がない模様、誰か彼を帰らせる方法を教えて欲しい。


「コルヴォ様の事信じて調合して良かったわぁ…危うくバリバリ副作用のある薬を調合する所だった」

「年齢だけでそんなに違うんですか?」

「勿論よ、成長期って骨とか伸びるじゃない?成長期が終わった後なら激痛だけなんだけどね〜、気をつけないと激痛だけじゃなくて骨に影響が出て、成長が止まったり逆に骨が脆くなって直ぐ折れやすくなるわよ」

「そんな危険な薬を投与したんですか!?」

「だって全治1ヶ月の怪我を1日で治す薬なのよ?しかもコタロー君の肩は銃弾が貫通してたんだから、普通に治療してたら完治するまで半年以上かかってたわよ」


ねー?とコタロー君の怪我をしていた右肩を撫でる、副作用があるとは聞いていたが一歩間違えば今後の人生に大いに影響が出るまでとは知らなかった。


「そんな酷い怪我を簡単に治しちゃうなんて、エムエムさん凄いお医者さんなんだね!」

「コタロー君副作用ある薬を投与されて、褒めてる場合じゃありません!」

「それにしてもコタロー君がこんな背伸びてるなら、ご両親はさぞ大きかったでしょうね〜、コルヴォ様位?」

「え?お母さんそんなに大きくなかったよ?去年の僕と同じくらいだったもん」

「去年どの位だったの?」

「えーっと…身体測定の時は153cmだった!」

「ならお父さんは?」

「お父さんは〜…どうだろう?会った事ないからわかんないや」

「…コタロー君、父親に会った事無いんですか?」

「うん」


コタロー君の発言に思考を一時中断する、父親に会った事ない?


「僕が幼年訓練所の時に1回会っただけなんだ、しかも後ろ姿見ただけで一度もお話した事も無いし…それに本当は赤ちゃんの時を入れて2回だけど、赤ちゃんの時なんて全然覚えてないよ」

「後ろ姿だけ…コタロー君、父親の髪が何色だったか覚えてますか?」

「え?」

「あらどうしたの紅菊ちゃん、そんな事聞いてどうすんの?」

「いえちょっと気になる事が…」


どうも最近のコルヴォ様の態度は引っかかる、もし連れて来られた時に考えた隠し子説が正しければ、その態度の大体は筋が通る…しかしコタロー君の言葉にその説は打ち消される事になる。


「えーっと…あっ僕と同じ茶色だったよ!」

「茶色?…どの位の身長だったか全然わからないんですか?」

「ん〜椅子に座ってて良くわかんなかった…あっ写真で見た事ある!お母さんより頭1個分大きかったよ」

「頭1個分…(という事は170cm位という事か)」

「その写真のお母さん、僕がお腹の中にいたからすっごくお腹大きかったんだー」


…髪の色はともかく身長がコルヴォ様と全然特徴が一致しない、やっぱり単なる思い過ごしか。


「ん?…あららもうこんな時間、そろそろ検査して軍に出勤しないといけないわ」

「え?もう行っちゃうの?」


ふいにエムエムは腕時計を覗き込み長居し過ぎた事に気付いた、やっと出てってくれるのか。


「午前中の内にタイムカード押したいからね〜、ここから軍まで私の愛車で片道30分だから、もう少ししたら出ないといけないわ」

「え?ここって日ノ本軍から30分で着くの?」

「んー私の愛車は科学者の愛人からプレゼントされた最新型の最速バイクで30分だから実際は車で1時間位かかるんじゃない?」

「車で1時間もするんだ」

「さっ検査始めるから上着脱いでくれる?何ならお姉さんが脱がせてあげましょうか?」

「ううん、僕1人で脱げるよ」

「あらら残念♡」

「…」

「そんな目で見ないで紅菊ちゃん、勃っちゃうわ」

「へし折りますよ?」

「ぜひお願い♡」

「………(コイツ何回殺せば死ぬのかしら?)」

「?…んん〜?」




湧き上がる苛立ちを心の奥に押し込めていると再び変な声が聞こえてくる、見てみればコタロー君が私を見ながら目を擦っていた。


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