能力者
「コルヴォ様、部屋の掃除ですが何せ10年分の埃が積もっているもので、掃除終わるのは明後日の昼頃になりますがよろしいでしょうか?」
「ああ」
掃除が一段落付き夕食を食べてから再び仕事部屋に戻れば、コルヴォ様は机の上の書類を封筒に入れている所だった。一番上の引き出しに仕舞い鍵をかける所を視界に入れつつ、ふと違和感に気付く。
「コルヴォ様、子供はどうしたのです?」
ソファの上で寝ていた筈の、子供の姿がなかったからだ。
「私の寝室で寝かせてある、怪我人を狭いソファで寝かせておく訳にはいかんからな」
「コルヴォ様は今夜どこで寝るんですか?まさか一緒に「んな訳あるか、今夜奇襲する予定のナイヤファミリーへの抗戦に参加する」
「?、コルヴォ様自らですか?ナイヤファミリーは弱小ファミリーですので、部下達だけに任せる筈では?」
「最初はそのつもりだったのだが…調べた所ナイヤファミリーのボスが能力者という疑惑が浮上した」
「能力者?」
「ああ、いつも壊滅寸前まで追いやられるがあと一歩の所で逃げられる…情報屋の話によればそれは能力を使用して逃亡しているかもしれないとの事だ、何の能力かは不明だがな」
「ただ悪運が強いだけじゃなかったんですね…闇の者ですか?」
「いや…もし闇の者ならただの常人に壊滅状態まで追い詰められる事はない、恐らく逃走の天才か能力者辺りだろう」
天才は100人力
能力者は1000人力
霊能者は他力本願
闇の者は人外だから手を出すな
どこかの軍師が戦力で例えた言葉だ
「なるほど、私達以外は我がファミリーの部下達もただの常人ですからコルヴォ様が参加する事になったのですね」
「そうだ」
私はクローゼットからコートを取り出し、コルヴォ様の肩にかけた。
「明後日の昼過ぎまでには戻る、留守を頼んだ」
「かしこまりました」
「ああ、それから…」
コルヴォ様はドアノブに手をかけドアを開けるが、ふと思い出したかのようにもう一度こちらに向き直る。
「あの子が起きたらなるべく優しく接してやれ」
「は?」
「それから何があっても絶対に怪我をさせるんじゃない、いいな?」
「はぁ…わかりました」
それだけ言うとコルヴォ様は部屋を出て行ってしまった…どういう事でしょう?
私は奥の部屋へと入り、コルヴォ様の寝室にあるベッドへと近寄り、キングサイズのベッドの上で蹲りながら眠りにつく子供を見る。
「(結局この子供の事は聞きそびれてしまった、コルヴォ様は一体どういうつもりで連れてきたのでしょう?)」
ただ目の前で騒動に巻き込まれた所を助けただけにしては扱いが丁寧過ぎる、そこら辺の一般病院に投げ込めば良いものを、わざわざアジトに連れてきてエムエムに治療させるなんて…しかも軽々しく200万出せるとは余程この子供が大事だと思える(それかエムエムに早く帰って欲しいほど嫌だったか、あるいはその両方か)
『それから何があっても絶対に怪我をさせるんじゃない、いいな?』
何があっても…もしや能力者?
ただの一般市民、それも子供が発砲されるとは考えにくい、もし能力者なら軍に戦力として否応無しに連れて行かれそうになったか、軍以外でも人身販売で高値で売れる…常人からの迫害として撃たれた可能性もある。
「(もしそうなら納得が行く…しかし何故その事を言わなかったのでしょう?)」
私はベッドに腰掛け考える………もしや隠し子?それならコルヴォ様への人質として誘拐しようとしたのかも。
「(…いや待てよ?確かコルヴォ様は今年で28になるって言ってましたね)」
この子は確か13歳、コルヴォ様が15の時の子供になる訳だから少々若すぎますね。
能力者なのか隠し子なのか、エムエムの言うとおり愛人としてなのか…いくら考えても答えを知っているのはコルヴォ様と睡眠薬で深い眠りにつく子供、明後日の昼には判明する事だから1人ごちゃごちゃと考えても仕方がないので、部屋に戻りましょう。
寝室を出ると仕事場の机に灰皿の上で山盛りになった吸い殻が目に留まる、さっきは吸わなかったのに…コルヴォ様の死因は肺ガンですね、そう考えながら私は吸い殻をゴミ箱に放り投げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます