私は紅菊

私の名は紅菊


実の父親に捨てられました。


紅菊とは名無しの権兵衛となり、野良猫の様に日々を生きていた私を救ってくれた恩人が付けてくれた名前です。


突然ですが恩人に拾われ、私がマフィアの世界に足を踏み入れ、テネブラファミリーに入団してから1年経った時、私の所属する組織のボスが死にました。


彼の死後、組織の後継者はボスに子孫がいなかった為、ボスがもっとも信頼を寄せていた側近であるコルヴォ様がボスに就任至りました。


コルヴォ・ドゥーエニッビオ


私の恩人の名前です。


本来なら同じ側近である私にも継承権があるのですが、私は数年しかマフィアにいないし、ボスの座に興味は無い為辞退、組織は後継者問題も起こらず、何の問題も無くコルヴォ様が引き継ぎました。


継承式の夜、彼は私にいくつか質問をした。


「紅菊、お前はボスの座に興味はなかったのか?」

「私がボスの器に見えますか?」

「私がボスとなる事に不満は無いのか?」

「不満も何も、組織に入った時から私がお仕えする方はコルヴォ様お一人でしたからね」

「…私が継承する事が決まった時、お前から“憎しみ”を感じなかった所からその言葉は本当の様だな」

「あなたの能力は心を読む事も出来るのですか?」

「気味が悪いか?嫌なら他のマフィアに移っても構わん、去る者は追わんぞ」

「この組織に入団させた本人が何を言っているんです、それに…」


“闇の者”を受け入れたがる所が限られているのは、あなたが一番理解しているでしょう?


その言葉に彼はこれ以上何も言わず、黙って私を側に置いた…彼は寡黙で人と馴れ合うのを苦手とし、自ら他人と距離を置き、ファミリーの部下達さえも自分から遠ざけてました。


そんな彼が私を側に置いてくれるのは、同じ“闇の者”からくる仲間意識か、それとも同情か…私が入団する前から組織にいた彼が、何故マフィアになったのかその経緯は不明、知りたくも無いし知ろうともしなかった。


そんな彼は顔面から左手首に掛けて左半身の素肌が黒く、黒いファーの付いた漆黒のコートを着て素肌を隠し。普段から金属製の鴉を模したアイマスクを付けており、素顔を見た事は1度も無い。


思考も過去も本当の顔さえも、謎に包まれた彼の考えている事はわからないが、私は彼から言い渡された仕事をこなすだけ…それが彼に対する恩返しであり生きがいなのです。


そう…彼は私の恩人、稀に意味不明な行動を起こしますが、私はそれに従うまでです。


コルヴォ様は月に一度花屋で(女性店員は全身黒ずくめの巨漢に怯え涙目で接客し)菊の花束を買い、コルヴォ様自らファミリーが経営する銀行で、どこかへお金を振り込みに行き(何も知らない一般人の銀行員に凄く怪しまれ警察を呼ばれそうになった)そして次の日にどう考えても必要のない(女性に贈るにしては縁起の悪い)菊の花束を持って「煙草を買いに行ってくる」と3時間位出掛ける、理解不能な行動を起こしますがその他は至って普通…


最初の2つはコルヴォ様に「そのくらい私がやりますよ」「いや、問題ない」「いえ、コルヴォ様の外見じゃあ目立ち過ぎてその内問題起こします」と説得の末に今では私の仕事の1つとなりました。


しかし菊の花束も意味不明ですが、20万は一体どこに振り込んでるのでしょう…まぁ不思議に思いますが興味は持ちませんがね。


コルヴォ様に拾って頂き彼に仕え初めてから2年が経ちある程度の事は慣れました、そうある程度の事は………しかし。

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