3・3 命題と文章


○前段


1 : Die Welt ist alles, was der Fall ist.

世界は全てである。あらゆる何か、その現象がそこにあるに依る。


2 : Was der Fall ist, die Tatsache, ist das Bestehen von Sachverhalten.

事実、事実は、事態の存在です。


3 : Das logische Bild der Tatsachen ist der Gedanke.

事実の論理上の像が、思考。


3.01 : Die Gesamtheit der wahren Gedanken sind ein Bild der Welt.

真実の思考の総体は世界の像である。


3.1 : Im Satz drückt sich der Gedanke sinnlich wahrnehmbar aus.

命題では、思考が感覚的に知覚可能な方法で表現されています。


3.2 : Im Satze kann der Gedanke so ausgedrückt sein, dass den Gegenständen des Gedankens Elemente des Satzzeichens entsprechen.

命題では、命題記号の要素が思考の対象に対応する形で思考を表現できます。


3.3 : Nur der Satz hat Sinn; nur im Zusammenhang des Satzes hat ein Name Bedeutung.

命題のみが意味を持ちます。名前は命題の文脈の中でのみ意味を持ちます。



○派生図


3001

|……

├201

||├2

||└3

|├1

|├21

|├3

|├4

|├51

|└61

| ├2

| └3




3.31 : Jeden Teil des Satzes, der seinen Sinn charakterisiert, nenne ich einen Ausdruck (ein Symbol). (Der Satz selbst ist ein Ausdruck.) Ausdruck ist alles, für den Sinn des Satzes Wesentliche, was Sätze miteinander gemein haben können. Der Ausdruck kennzeichnet eine Form und einen Inhalt.

私は、意味を特徴づける文の各部分を表現 (記号) と呼びます。 (文自体が表現です。) 表現とは、文の意味に不可欠な、文が相互に共有できるすべてのものです。式は形式と内容を表します。


3.311 : Der Ausdruck setzt die Formen aller Sätze voraus, in welchem er vorkommen kann. Er ist das gemeinsame charakteristische Merkmal einer Klasse von Sätzen.この表現は、それが出現する可能性のあるすべての文の形式を前提としています。これは、文のクラスに共通する特徴です。



3.312 : Er wird also dargestellt durch die allgemeine Form der Sätze, die er charakterisiert. Und zwar wird in dieser Form der Ausdruck konstant und alles übrige variabel sein.

したがって、それは、それを特徴づける文の一般的な形式によって表されます。この形式では、式は定数になり、その他はすべて変数になります。


3.313 : Der Ausdruck wird also durch eine Variable dargestellt, deren Werte die Sätze sind, die den Ausdruck enthalten. (Im Grenzfall wird die Variable zur Konstanten, der Ausdruck zum Satz.) Ich nenne eine solche Variable »Satzvariable«.

したがって、式は、式を含む文を値とする変数によって表されます。 (極限の場合、変数は定数となり、式は文になります。) このような変数を「文変数」と呼びます。


3.314 : Der Ausdruck hat nur im Satz Bedeutung. Jede Variable lässt sich als Satzvariable auffassen. (Auch der variable Name.)

表現は文中でのみ意味を持ちます。各変数は文の変数として見ることができます。 (変数名でもあります。)


3.315 : Verwandeln wir einen Bestandteil eines Satzes in eine Variable, so gibt es eine Klasse von Sätzen, welche sämtlich Werte des so entstandenen variablen Satzes sind. Diese Klasse hängt im allgemeinen noch davon ab, was wir, nach willkürlicher Übereinkunft, mit Teilen jenes Satzes meinen. Verwandeln wir aber alle jene Zeichen, deren Bedeutung willkürlich bestimmt wurde, in Variablen, so gibt es nun noch immer eine solche Klasse. Diese aber ist nun von keiner Übereinkunft abhängig, sondern nur noch von der Natur des Satzes. Sie entspricht einer logischen Form - einem logischen Urbild.

文の構成要素を変数に変換すると、文のクラスが存在し、そのすべてがこのようにして作成された変数文の値になります。このクラスは通常、私たちが任意に合意してその文の一部が何を意味するかによって決まります。しかし、意味が恣意的に決定された文字をすべて変数に変換すると、そのようなクラスは依然として存在します。しかし、これは合意に依存するものではなく、文の性質にのみ依存します。それは論理形式、つまり論理原型に対応します。


3.316 : Welche Werte die Satzvariable annehmen darf, wird festgesetzt. Die Festsetzung der Werte ist die Variable.

設定された変数が取り得る値が決定されます。値の設定は変数です。


3.317 : Die Festsetzung der Werte der Satzvariablen ist die Angabe der Sätze, deren gemeinsames Merkmal die Variable ist. Die Festsetzung ist eine Beschreibung dieser Sätze. Die Festsetzung wird also nur von Symbolen, nicht von deren Bedeutung handeln. Und nur dies ist der Festsetzung wesentlich, dass sie nur eine Beschreibung von Symbolen ist und nicht über das Bezeichnete aussagt. Wie die Beschreibung der Sätze geschieht, ist unwesentlich.

文変数の値の決定は、その変数が共通の特徴を持つ文の仕様です。修正はこれらの文の説明です。したがって、決定ではシンボルのみが扱われ、その意味は扱われません。そして、これだけが決定にとって重要である、それは単に記号の説明であり、何が意味するのかについては何も述べていないということである。文章がどのように説明されるかは重要ではありません。


3.318 : Den Satz fasse ich - wie Frege und Russell - als Funktion der in ihm enthaltenen Ausdrücke auf.

私は、フレーゲやラッセルのように、文に含まれる表現の関数としてその文を理解しています。


3.32 : Das Zeichen ist das sinnlich Wahrnehmbare am Symbol.

記号とは、記号の中で感覚的に知覚できるものです。




 オーケー、オーケー。次テーゼの導入までも込みで今日の分を見たほうが遙かに見通しがいい。言うて晴れ晴れと見渡せるわけでもないけど。


 この本を理解するためにも、何度も何度も過去の記述を振り返る。まず、今日の記述において命題に「表現」という言葉が更に降りかかられた。何を話そうとしているかと言えば、「我々が日常的に目撃している文章とは何か」についての分析的理解なのだ。文章について様々にタマネギの皮を剥いていきましょう、では何が出てくるでしょうね、を、「最も遠いところから順に、自分の元に近付ける」。


 こと・もの

 こと・ものの形式・配置

 こと・ものの集積=事態

 事態の集積・総体=世界

 世界を受け取る=像

 像を認識する=写像

 写像を把握する=思考

 思考を表現する=命題

 命題の現れ方=表現


 一方で、命題を別方向に紐解いてみると世界の表現のために「名」という単純記号があり、単純記号を結びつける命題記号が現れる。命題記号は「文法」という配置基準に沿って配置される。こうしたありようを「表現」と呼ぶ。


 ところで、ここも一応言葉として吐き出しておこう。現状「世界」を観測して我々の中に生まれた「像/写像」が、本当に「世界」を正確に映している保証がない、と書いている。一方で、現状「命題は確実に分析される」と書かれる。これは「世界」と「像」との関係とはまったく関係なしに命題の真が了解される、と言うことになるのだろう。とはいえこのテーマについて「文章」という「こと・もの」の段階に引きずり下ろしてしまうと「文章を写像化するに当たって正確に映される保証がない」となってくる。なので「命題が確実に分析される」を、うかつに「文章の意味は確実に把握される」としてはならない。ふむふむ。と言うかこの文章ひとさまに読んで頂いてどーすんの? まあまあ。


 この先に表現が受容されて「自我」の元にどう届くか、これをどう表現しきれるか、その最大値は、その最大値の先にあるものは、の話がなされるのだろうが、まあその辺はおいておこう。先走りは先走りで必要だが、それよりもいまのぼっている「梯子」の段をあたら飛ばすべきでもない。たぶんそれをやると結局先の段を踏み外す。


 と言う本日の前置きを決めて、本日の分。


 わからん。


 うん、だめ。わかんない。なんかねー、やっぱり荘子が邪魔してくるんですよ。散々書いてますが荘子はもうこのくっそ複雑な議論を数段飛ばしでぽんと駈け抜け、「じゃあ語り得ないけどどうしよっか!」でどんどん先に進んじゃうわけですが、こう言う段飛ばしの議論が自分の中にあるせいで、なんか余計な予断が邪魔をしてくるんです。


 たとえば、3.317の「決定ではシンボルのみが扱われ、その意味は扱われません。そして、これだけが決定にとって重要である、それは単に記号の説明であり、何が意味するのかについては何も述べていないということである。」というもの。もう完璧に「以指喻指之非指,不若以非指喻指之非指也」にしか見えないの。つまり「指とは何か、なんてことはどう足掻いても言い表しようがないのだけれど、実際の指を示して「これではないもの」とならなんとか言えるじゃん?」なんですよ。


 俺の中で突然これをぽんと置かれているせいで、ここだけを唐突に理解し、その前段階がわからない……の、だが。


 解説を読む。えーとなるほど、命題定項と命題変項? なになに、つまり「指は」と命題定項を置き、このあと「本で数えられる」「爪がある」「間接がある」「手や足につく」などと言った、「指は」に当てはめられるような様々な内容を変更とし、こうした変項を次々に当てはめることで指について辺縁的に言い表すことができるね、と言うことか。ただしそれは結局のところ「指が何であるのか」ということそのものについては語りようがない。


 この理解もまだ辺縁的なのだが、やはり3.3全体を見渡した上でまた各項に突っ込んでいかないと話にならなさそうである。

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