第4話 道中の景色

幸壱こういち君!!いよいよ明日、もう1度、上竜山じょうりゅうさんに登るよ!!」


そう登華とうかが元気な声で宣言する。


「え?もう登るのか?まだ2ヶ月しか経ってないぞ?」


そう幸壱は驚く。


「ノンノン。まだ2ヶ月じゃないよ。

2ヶ月だよ幸壱君。

それに、そろそろ私がこの町で1番好きな景色が見れると思うんだよねぇ。」


そう登華がワクワクした様子で話す。


「でたよ。その言葉。

でも、本当に大丈夫なのか?

もう死にそうになりながら登るのは嫌だぞ?」


そう幸壱が弱音をはく。


「大丈夫だよ。この2ヶ月間、毎日私と一緒に走ったんだから、相当体力がついてるはずだよ。レベル2ぐらいの山、余裕で登れるよ。」


「レベル2?」


そう幸壱は聞き慣れない言葉を聞き返す。


「そう。この国の山には“登山とざん管理かんり団体だんたい”と言う国に認められた組織が作ったレベルがあるの。

1~3は登山初心者でも登りやすい山。

4~7は登山に慣れてきた人にオススメの山。

8~10は登山歴が5年以上の人にオススメの山で11以上の山に登るにはプロ免許が必要なの。」


そう登華はこの国の山について詳しく説明する。


「へぇ。意外とちゃんとしてんだな。」


そう幸壱は感心する。


「だから、今の幸壱君ならレベル2の山なんて余裕だよ。」


そう自信満々に言う登華を幸壱は少し疑った目で見つめる。



そして次の日。


幸壱と登華は登山とざん許可証きょかしょうのシールをリュックの見えやすい所に貼って上竜山を登っていた。


1時間ほど登って幸壱はある事に気がつく。


(あれ?全然、疲れてない?)


そう思った幸壱は足を止めて案内看板を見る。


案内看板には頂上まで残り約半分と書かれていた。


「幸壱君。どうしたの?」


そう聞きながら登華が幸壱の横に立つ。


「いや、もう半分も登ったんだなって思って。」


そう幸壱が答える。


「だから言ったでしょ?今の幸壱君なら大丈夫だって。」


そう登華が微笑む。


「お前はオレの力を過剰かじょうに信じてる事があるからなぁ。」


そう幸壱は言葉を返す。


「それは幸壱君が自分の能力を過小評価してるだけだよ。」


「え?」


そう幸壱は登華の言葉に驚く。


「ほら、高校の時だって、私が絶対に小説家になれるって言っても信じてなかったでしょ?」


「当たり前だろ?あの時は趣味程度にしか書いた事なかったんだぞ?」


「でも今はそこそこ人気の小説家になれてるでしょ?」


そう登華に笑顔で言われて幸壱は返す言葉が見つからず目線をらす。


すると幸壱の眼に綺麗な景色が映る。


「どう?前回は道中の景色なんか見てる余裕なかったでしょ?」


そう登華に聞かれて幸壱は素直に「綺麗だよ」と答える。


そんな幸壱のてのひらにヒラヒラと1枚の桜の花びらが舞い降りてくる。


その桜の花びらを見た登華は元気な声で「ほら、早く登ろう」と言って歩き出す。


そんな登華の背中を幸壱は不思議そうな表情で見つめる。

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