鼻毛カッター
愛彩
鼻毛カッター
『鼻毛のお手入れきちんとしているのね。』
驚きました。
美意識の高い同性の友人から、鼻毛について褒められました。
今まで、褒めてもらった経験は、何度かありますが、鼻毛については初めてでした。
嬉しさ、半分、鼻毛まで見られているのだなという謎の緊張感、半分、といったところでしょうか。
たしかに昔から、恋人と会う時も、同性の友人と会う時も、いや、どんな相手であれ、隅から隅まで綺麗に準備をしてきたと思います。
他と比べて、では無く、あくまでわたしの基準の中で、ですが。
勿論、鼻毛の処理も欠かせません。
鼻毛カッターを鼻の中に、突っ込みグルリグルリ、と。
その時の顔と言ったら、とても他の人に、お見せできるものではありません。
鼻の穴が小さい方ではないと思うので、鼻毛カッターはすっぽりと鼻の中に収まります。
先日、わたしの祖父も鼻毛カッターを鼻の中にグルリグルリ、しているところを見かけました。
DNA、でしょうか。
ひとりで笑ってしまいました。
かと言って、恋人に鼻毛のお手入れは強要いたしません。
寧ろ、ちょこっと鼻毛が出ているくらいの方のほうが可愛らしくて好きですかね。
いつかの恋人は、よく鼻毛が出ていました。
一応、鼻毛が出ていることをお伝えするのですが、なんとまあ、毎回、鼻毛を鼻の中に戻し込むのです。
切るのでも、抜くのでもなく。
でもね、わたしはそれが好きでした。
鼻毛の処理に必要不可欠な鼻毛カッターは、鼻毛を戻し込む恋人とは、また別の恋人から大昔にワンコインで買ってもらったものです。
長いこと愛用しているので、それはそれはオンボロです。
先日、遂に鼻毛カッターが壊れました。
変な音を立て、刃の部分が分解してしまったのです。
長年、使ってきましたが、はじめて3枚の刃からできていることを知りました。
自分で、もう一度組み立てて、使ってみましたが、組み立てる順番が違うのか、どうも、うまく鼻毛たちを刈り取ってくれません。
困りました。
もうすぐ、美意識の高い友人と会う予定が控えているというのに。
鼻毛チェックで不合格になってしまいます。
無理矢理、壊れたままの鼻毛カッターで鼻毛をカットしていました。
ジリリ、と変な音がします。
綺麗な鼻毛を保つ為とは言え、少し怖かったですね。
恐怖に怯えながらの鼻毛処理は、とある日、終わりを告げます。
鼻毛カッターが壊れたことを知った母が、新しい鼻毛カッターをプレゼントしてくれたのです。
彼に貰ったワンコインのものより、グレードアップしたお高めの鼻毛カッターです。
使ってみて、びっくり。
鼻毛は、全て消え去りました。
無駄に高い訳では無いようです。
と、いうことで、もうワンコインの鼻毛カッターの出番はございません。
今すぐにでも処分しなくては。
ならないのですが、未だに机の上に置いたままなのです。
前の前の、恋人に貰ったものなのに。
困りました。
実を言うと、彼との思い出は、パチンコの景品で貰った大き過ぎる指輪も、初めて一緒に観に行った映画の半券も、わたしの大好物のヤングドーナツのキャラクターのクッションも、わたしには可愛すぎてしまう某ブランドのモコモコパジャマ上下セットも(これが一番念が強そうです)捨てられずにいるのです。
困ったものです。
ああ、もう今日お家に帰ったら捨てる!
取り敢えず、鼻毛カッターは。
それでは。
鼻毛カッター 愛彩 @omoshiroikao
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