第2話 初づくしの日
「さぶー」
元旦の初詣。大晦日の夜から来たのは初めて。結構の人出の多さにびっくりするが、それよりもさすがに夜通しでの初詣は、寒さが身に堪える。
いつもは家族だけで過ごしていた大晦日。今回は隣に……。
「カオル、大丈夫か?」
「あ、うん」
タケルが隣にいる。俺よりも少し背が高いことに今気づいた。普段は意識したことないのに、なぜか今はやたら気になる。
タケルと俺は幼稚園の頃からの幼馴染。そしてこの前のクリスマスから恋人同士になった。自作したかまくらでのファーストキス。そばにいるのが当たり前で、好きという感情はもちろんあった。でも普段の好き、とは違う好き。それはキスして分かった気がする。
「ほら、手」
「え?」
「寒いんだろ?」
俺の手を掴んだタケルは、そのままタケル自身の上着のポケットへ……。あったかい。やばい、顔が赤くなりそうだ。
「あったかいだろ?」
「うん」
なんだこれは。心がぽかぽかしてきた。恥ずい……。
「こうしてカオルと初詣くるの初めてだな」
タケルの家族は、毎年大晦日から初詣に出かけていた。今年はタケルが俺を連れ出し、しかもタケルがいつも行く神社とは別の神社へ来ている。
タケルの顔に視線を向けると、真っ直ぐ正面を向いている。口角が少しあがって嬉しそうなのが伝わってきた。そういえば、こいつ結構イケメンだよな。まつ毛が長いことに今気づいた。知りすぎてると思った相手なのに、意外と見てないことって多いのかも。
「このまま二人で初日の出、見に行こうな」
「徹夜? マジ起きてられっかな、俺」
「カオルは年寄りくさいな。本当に俺と同い年かよ」
「同じに決まってんだろ」
初詣に初日の出。そして初デート。初づくしのオンパレード。幸せすぎる。
「でも初日の出って7時近くだろ。どこで時間潰す?」
「そりゃ、決まってんだろ」
「え?」
「恋人同士が行くところ」
「は?」
悪戯っぽい笑顔を向けてきた。こんな時のタケルは何かを企んでる。それに恋人同士が行くところって、どこだよ。
「あ、雪」
「ほんとだ。どうりで寒いはずだな」
手のひらに雪が落ちて溶けた。顔を夜空に向ける。神社の参道の灯に照らされた雪が空からゆっくり落ちてきて、頬に落ちた。冷たいはずなのに、紅潮した顔にはちょうどいいみたいだ。
雪が落ちてこないと思って目を開けたら、タケルの顔がそこにあった。そして口元があったかい。
「新年おめでとう」
「え?」
「いま0時になった」
「新年おめでとう、タケル」
顔を見合わせて二人でクスクスと笑った。
「ずっと一緒にいような」
「うん」
人出の多い神社の初詣。ようやくお参りができた時には2時を回っていた。
それから日の出までの約5時間は、タケルが言ったとおり恋人同士が行くところへ行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます