第3話 暖かい物
――――――そして、高校卒業前日。
結月の実家へ仕事終わりに送って行くと、
結月からキスをしてきた。
「…稜太。今日じゃダメかな?」
「明日でいいだろ。おあずけだ。」
「もう、独りは
「…本当にお前は可愛い奴だな。夜更かしするか?」
僕はそのまま引き返して自宅で……。
――――――――――――朝5時。
「結月、送ってく。」
「うん。ママに謝んないと。」
「俺も一緒に謝るから。」
「…悪ガキ2人だね。」
「ママが俺より年上でよかったよ。」
そう。結月の母親は50代。
遅い時の子で片親で育ててた。
実は結月をうちで預かり始めた一年生の頃から連絡先は知っていて、折々に話をしていた。
なので、昨日の事も伝えてあって、朝には戻すと話していた。
―――――――――30分後。結月の自宅。
「ただいまー…。」
結月が鍵を開けて小声で家に帰ると、
ママが起きていて、キッチンで泣いていた。
「おかえり…。」
「え??ママ?!なんで泣いてんの?!」
結月が駆け寄ると、小さなママは小さな結月を抱きしめた。
「おめでとう…。ママね、いつもの時間に起きちゃったの…。あんたのお弁当作る時間にね…。」
そして、僕の方に目をやると、
「稜太君、この子の事お願いね!…なんも出来ないからって返してきたら承知しないから!…」と泣きながら訴えてきた。
だから僕は、
「うん。大丈夫。大変な時は俺もママの所に来るから、よろしくね。」と笑って言うと、
「ほんっとにろくでもない息子ができたわ…」と涙を拭いながら笑っていた。
「稜太とそんな感じなの??」と驚く結月。
「そうよ?…稜太はね、あんたが稜太の所で働き始めた頃からちょくちょくママに電話くれたり、直接会いに来てくれたりしてたの。どうせ作戦だと思うけどね!」とまた笑っていた。
「そう。頭脳犯。」と僕も笑うと、
「だからか…。」と結月が納得していた。
「そう。だからあんたが遅く帰ってきても何も言わなかったの。そういう日は必ず稜太が連絡くれてたから。」
「…一人娘だもん。ママだって把握しておきたいでしょ。」
「そう。世間がなんといおうが私は稜太を認めてるの。稜太もあんたも私の子。…なにしてんの、おいで!」
結月の母は母性の強い人。
結月の母親って感じの人。
僕も結月と一緒にママに優しさを貰った。
「ねぇママ、俺、結月を短大行かせるからね。」
「ありがとう。でも稜太は、いいの?」
「…よくはないよ。よくわないけど、やりたい事させてあげたいし、後悔しないようにしてあげたいから。」
「稜ちゃん。本当に行っていいの?」
「いいよ。もう決まったことなんだから。でも男作ったりするなよ。」
「するわけないでしょ?」
「この子はしないわ。私と同じ。」
そう。ママはずっと亡くなったご主人だけを思って生きてきた。
そんな純愛を見て育った結月だから僕に真っ直ぐでいてくれていた。
僕はそんな2人と家族になると決めた。
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