✧02✦ 天華に知る
鈍色に冴ゆる朝光すら、
「何故上層部は補給を寄越さずに、奇怪な化け物共など寄越したんだ! こちらは上海戦で戦友達を殺され、餓死寸前で南京へ進軍しているというのに! 道中の士気を乱す、
国民革命軍に編入した元政敵の八路軍は、日本軍を
「ご心配なく。僕らの化け物は、貴方達と喰らうモノが違いますので。餓鬼道から抜け出したいなら、貴方が視る世界を信じてみては? 」
玉兎の
「
「大丈夫よ、しょうちゃん。浬は私が守るから」
「そうしてくれると有難いな、桐乃。三橋中尉も、僕を守ってくれるだろ? 」
「……あぁ」
地獄耳の浬は舞い戻り、頬染めて惑う桐乃の腰を抱いた。奴の流し目が、本能を
「こんな夜間に、山中を偵察? 確かに
「山中の部落に潜伏する八路軍は、進軍を妨げる為に夜間の奇襲や橋の破壊を仕掛けてくる事が多い。但し、奴らは装備が貧弱だ。遊戯戦に絡め、鹵獲しに来る傾向にある。補給が滞っている以上、銃剣頼りの
「不安だけど、やってみるよ。……
桐乃は睫毛を一瞬伏せたが、意外にも反対しなかった。妖と言えど、武器無しでは命取りだろうに。淡い微笑みを前に、揺らぐ白息を喰い殺す。犬の遠吠えがふいに止み、新月の森を睨ませた。
「塹壕には気配ありません。前方の家屋から、八名の鼓動が聞こえます」
「単身で突っ込み、炙り出せ」
命令した瞬間、半妖の青年隊員 : ❮
「しょうちゃん、後ろ! 」
目を剥いて振り向く前に、桐乃に庇われて突っ伏す! 土竜の如く新たな兵士らが現れ、銃声と怒号が飛び交った!
「奇襲返しか! 先に散開しろ! 」
半妖達が反撃に発つ! ところで、上のふくらみが柔い。幸運な偶発イベントのはずが、
「
腕を引き摺られて突っ立てば、柄付きの危険物が大量に転がる! 八路軍お手製☆石の手榴弾は、兎耳伏せた桐乃にタンコブを負わせていた。焼け付く疾走の最中、自分が兵士へ投げ返せばGoodタイミングで炸裂する! ついに、真の味方へ牙を剥いてしまった。
「悪いな、条件反射だ……って、避けろ桐乃! 」
三十年式銃剣が襲い来る! 自分と繋いだ手を離し、桐乃はくるりと躱す。
「手ぶらだったろ、一体何処から出したんだ!? 」
「実存武器を所持する『人』とは違い、私達は体温というエネルギーから武器を顕現出来るの。妖力の武器なら盗まれない! そして火事は、鍛治。昔話の兎に『火』が相棒なのは、『兎』が『製鉄』を齎した一族の末裔だからなのよ! 異能、【
鮮やかに笑った桐乃が、ぴょんと鉄槌を地へ振るう! 鼓動の内核ごと、
「ごめんね、戦いはお終い。叶うのならば、誰にも死んで欲しくないの。私達に降伏してくれれば、悪いようにはしないから。少しだけ、眠ってくれればいいよ」
夜に浮き立つ焔が、彼女の理想を叶えてしまう。どんな地獄でも、甘く綺麗にしゃんと立つ。
「異能、【
❮
「そんなに見ないで欲しいな、しょうちゃん」
「お前達は……人に尊厳を奪われた捕食者なのに、命を奪わないのか。誰も死んでやいやしない」
「私達は
抗う魂達を、畏れる心が満ちていく。稀少な『妖』という生き物に魅了されてしまったのは、
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