大好きだった彼女に浮気されて、人生転落した話。

くまたに

第1話 幸せはイケメンだけが掴むもの?

「大好きだよ」

「私も大好きよ」


 僕の名前は、平野ひらの ひびき。絶賛青春中だ。


 そして、僕の目の前にいる黒髪ロングの彼女の名前は菊地きくち 冬美ふゆみ


 彼女は、学校の中でもトップクラスに可愛い。それなりに身長が高く。長い髪がとてもお似合いだと思う。運動もできて、回りからの好感度はとても高い。

 

 勉強は、少し苦手。というのは僕だけが知ってる秘密。

 けれど、僕は勉強はできる方なので彼女に教えることが出来るのでそれは、それでいい。


 僕と彼女が付き合ったのはちょうど10ヶ月前。


 同じクラスで幼馴染だった僕たちは、席替えで横になった時に授業中とかもずっと話していた。そうしたらいつの間にか彼女のことを好きになった。

 

 頑張って告白したら、彼女は満面の笑みで「私も好きだよ」と言って付き合ってくれた。


 そこからは僕の人生は薔薇色だった。

 毎週のように彼女の家で映画を見たり、昼ごはんを作ったり。

 ホラー映画が苦手なくせに強がってホラー映画を見てビビっている彼女の横顔、料理をしている時の真剣な横顔。僕は、いつの間にか彼女がいないと生きていけないようになっていた。


 あの頃は気がついていなかったけれど僕は、彼女にしていたのだ。


 彼女は、「付き合っている事が学校の人にバレたくない」と言っていた。それは、決して僕といるのがという訳ではないはず。

 「付き合った」という話をすると、周りから色んなことを言われるのが普通だけど。それが彼女は嫌だったらしい。


 僕は、彼女の願いはできるだけ全て叶えたい。とそう思っていたから、僕はもちろん付き合っていることが周りにばれないように頑張った。


 彼女と同じクラスだった2年間は、(彼女と付き合ったのは2年の春)彼女と休み時間に話していると、最初は、クラスの人達は「えっ!付き合ってるの?」とか言ってきたけれど、1ヶ月も経てば何も言われなくなった。


 2年連続同じクラスだったので、3年生になっても同じクラスになれるとそう思っていた。


 けれど、彼女と同じクラスにはなれなかった。

 玄関に張り出されている新しいクラスを見た瞬間僕は、絶望した。「もう毎日のように学校で彼女と話すことは出来ないんだな」と思った。


 新しいクラスになったその日、僕は彼女と通話をしていた。

 そこで彼女は僕に、

「毎日話せないと、付き合ってる意味が無いから毎日話そ?」

 と、言ってきた。

 嘘だろ…?

 うちの学校は全校生徒は300人もいない小さい学校。だから、廊下とかで話していても見つかるのはせいぜい70人位だろう。


 だから、僕は陰キャだけれど、大体の人と話すことは出来る。(自分から話すのは苦手)


 けれど、うちの学校の女子は、表面おもてめんでは仲がいいけれど裏面ではバチバチ。

 そんな人達だから、僕が話していても恐らく何か言われるだろう。


 最悪なことに僕は、地獄耳だ。結構離れたところでの陰口も聞き逃すことは無い。


 だから、陰口を言われるとだいたい聞こえて傷ついてしまう。けれど、彼女と別れると絶対に僕は間違いなく傷ついてしまう。


 僕は、新しいクラスになって2日目の休み時間から毎日彼女に話しに行った。

 当然周りからの鋭い視線。けれどここで負けてはいけない。


 僕と学校でも人気な彼女が話しているという事は、学年中。だけではなく、学校全体に広がった。


 僕は、教室の中ではクラスメイトから陰口を言われ、移動教室の時に教室から出ると、後輩から煽られたり、からかわれたりした。


 そうして、僕の心はすり減っていった。

 どうして僕はこんな思いをしないといけないの?ふざけんなよ!

 気が付けば毎日のようにそんな事を思うようになっていた。


「(あいつ毎日冬美ちゃんと話してるらしいよ)」

「(まじ?キモすぎでしょ)」


「(顔もキモいし、いつも冬美ちゃんに話しかけててキモいから、ほんと死ねばいいのに)」

「(それな、あんなヤツ死んでしまえ)」


 そんな言葉が毎日のように聞こえてくる。付き合ってると言えば済む話。

 僕は、耐えれなくなって、その事を彼女に言うと、

「私も言われるからやだ」

 と、言われた。

 はぁ。人間ってやつはみんな自己中だ。自分が傷つくと思ったら何もしない。他人任せ。

 本当に、意味がわからない。


 段々彼女への思いも薄れていった。けれど僕は彼女にしてしまっているから、別れることは出来なかった。(この時もまだ、依存していることに気づいていなかった。)


 そんな彼女への思いは、ある日全て消えた。

 それは、修学旅行。


 修学旅行の日の朝。僕達は3日間ほど会えない。そして、喋れなくなるから僕達は、お互いの声を聞くために通話をしていた。


 彼女は僕に、

「嫉妬するから他の女の子と話さないでよ」

 と、言った。

 僕は、彼女と付き合ってから周りからの好感度が落ちることを承知の上で女子と一切話さなくなった。

 それなのに彼女は、ずっと疑ってくる。

 悪口や、陰口を言われてまで頑張ってのに、疑われる。

 本当に生きることが辛くなってくるよ。


「分かった。女子と話さないよ。その代わり冬美も他の男子と話さないでよ?」

 彼女も、僕と同じように悪口は、言われないと思うけれど悪いように思われて欲しくなかったから。話さないで。と言った。


 修学旅行の、目的地は東京。

 東京に行くために僕達3年生は、新幹線が停車する、少し大きい駅に来ていた。

 そこで僕は、見たくなかった光景を見てしまった。

 他の男子と話す彼女。その顔はずっと笑顔。

 彼はとてもイケメンで、運動神経がいい。という理由で、女子から好かれている人だった。


 そんな光景を、皇居の庭のような所での休憩時間でも、ライ〇ンキングの公演の途中である休憩時間でも、点呼を取るために3年生全員が集合した時にも見た。


 そう。彼女は僕との約束を完全に忘れている。と、思ってしまうくらいにその男子と話していた。


 修学旅行が終了し、家に帰ると、彼女からLINEが来ていた。

『ごめん』

 その一言では僕はどういう意味が理解できず、彼女に通話をかけた。


 プルルル、プルルル。

 感情のない(あったら怖い)電子音が耳元で聞こえてくる。コールの数が増える度に僕の胸は締め付けられるように痛くなる。


 そして、8コール目。

 ガチャ。

 彼女が通話に出た。

「ごめんってどういうこと?」

『修学旅行中に見ていたからわかると思うけれど、違う人を好きになった。それで、その人と付き合ったからもう別れて』


 やっぱり顔が良くないと選んでもらえないんだな。


 僕達が付き合って、1年記念日の3日前の夜。

 僕は、1人で泣いていた。


 冷めてきていても、ショックの方が大きい。

 苦しい。寂しい。イライラする。嫌なことは全て僕にさせて、要らなくなったら違う人か、

「ふざけんな」

 気がついた頃にはその言葉が口から出ていた。


 浮気された悲しみと同時に、「やっと開放された」と思っている自分がいた。


 学校に行くと、彼女と修学旅行中に彼女と話していた男子が付き合ったという話は学校中に広がっていた。


 僕と付き合っていたときには絶対に言わなかったのに。なんで?おかしいよね?


 僕が彼女と話していることをよく思わない周りの人達からは、


「(冬美ちゃん。良かった平野くんからやっと開放されたんだね)」

「(そうだね。あの2人、幸せになって欲しいな)」


「(平野は冬美ちゃんのストーカーだからな、冬美ちゃんの事を、ちゃんと守ってあげて欲しいね)」

「(それな)」


 と、いう陰口が聞こえてきた。


 僕が教室に入ると、

『平野お疲れ様。人生頑張ってね』

 と、黒板に大きく書かれていた。


「(消えろカス)」

「(存在自体がゴミ)」

「(なんで生きてるの?)」

「(死ね)」


 そんな言葉が聞こえてくる。昨日の夜一夜漬けで泣いていたから、もう僕の目から流れるものは無い。


 。という感情もほとんど無くなって来ていた。


 けれど死にたい。


 そう思ってしまう。

 屋上から飛び降りたら死ねるかな。

 でも、大事なお母さんとお父さんに、迷惑かけたくないな。

 とりあえずになってから死のう。


 なぜ高校生になったら。と、思ったのかは分からない。

 もしかしたら死ぬのが怖いと思っていたのかもしれない。

 だから高校生になったら。と、決めたのは死ぬための心の準備をするためだ。


 僕は、高校生になったらそれは、決して深刻な病になった訳でも、殺害予告をされた訳でもない。

 自分の意思で高校生になったと決めた。


 僕の人生が終わるまでのタイムリミットはこの時始まった。

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大好きだった彼女に浮気されて、人生転落した話。 くまたに @kou415

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