切り分けられた肉体
わざと身を寄せられると
素肌に目の荒いセーターを
着せられた気持ちになり
偶然を装って手を触られると
冷水を浴びせられた髪を肌に
はりつけられた気分になる
ひとつの記号として消費される
あの視線は
どうしてこれほどまでに
身体を硬直させるのだろうか
舌の奥が不自然に迫り上がって
物が食べられなくなった
頭が変にじんとして
何も考えられなくなった
どうして人間として生きられないんだろう
肉体にばかり価値をつけられて
勝手に奪われて
失い続けて
減るはずのない肉体がずっと
切り分けられている気がする
切り分けられた人体は
もう戻っては来なくて
欠けたままの傾いた身体が
また誰かに消費される
僅かになったものはさらに
希少価値を生み
やがてつり上がって
いずれ地に落ちるのだ
取り返そうと躍起になっても
細切れにされた肉体が
もうどこに散らばっているのか
わからなかった
わからないまま
あぶくになりたいと
祈るしかなかった
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