夢想家の朝

小さい頃市民プールで必死になって

泳ぎの練習をしたあしも

今では五センチヒールを履くためのあしになって

スーツを脱いで

たまに湯船でひらひらさせる

絡みつく湯は海とほど遠い

でもたまに

夢を見るんだ。

尾ひれが生えて

ずっと遠くの

追いつけない地平線の向こうまで

ただただ自由に泳ぎつづける

夜明けを。

海藻の上に横たわって見上げる

月を。

目が覚めて息を吸うまでの間は

あぶくとなって消える生き物になる

立ち上がって肺に酸素を入れたら

わたしはまた

人間になる。

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