異端なる貴方に贈る異世界人生~“Beginning and End”~
@harunagie
第1話 始まりは突然で そして眩しく
いつもと変わらぬ風景。竹刀のなる音。裸足で駆け回り鳴る摩擦音。そこには目標などなくただ手に持つ竹刀を振る青年がいる。
「――今日はここまでだ。」
コーチがそう言うと各々着替え、そして荷物をまとめその場を後にする。青年もそのようにして帰る。
「………何がしたいんだろうな。俺。」
渚凑17歳高校生 得意科目は歴史 剣道部主将 全国大会制覇目前で敗北。父は元オリンピック選手、母は現教授
だが、本人はなんの取り柄もない。勉強はダメ。剣道だけだと思っていたのに大会で敗北さらには他のスポーツもダメ。本人は全国大会制覇目前だったなんて偶然だと思っている。そんな彼は進路に悩んでいた。
「俺は両親のような立派な人にはなれない……」
自分には親のような万能さは持ち合わせてはいない。
親がすごいと周りからの期待もすごい。それがどれだけ本人にとってプレッシャーとなりストレスとなるか……
そして才能のない自分をどれだけ呪い期待してくれた両親に申し訳なく思ったか……
唯一彼に楽しめるものがあるとすれば……神話関係の話だ。剣道以外で神話の話は自分の娯楽となっていた。
「疲れた。とりあえず進路のことは後でいいか……」
進路のことを考えるのがめんどくさくなり、放棄する。
そんな彼にとっては変わらない普通の生活だ。
「ん?」
ふと違和感を覚える
辺り一帯の音が消える
次には視界が真っ暗になり足場すらなくなる。
「うぉぉぉぉ!?」
突如襲う自由落下
「なんだよぉ!」
落ちながらふと声が聞こえる
――あぁどうか――
「うるせぇ……今それどころじァ……」
頭に響く
――あぁどうか、この消えゆく運命にある――
「………頭に響く……」
頭に響く。痛い。全文が聞こえない…
――あぁどうか、この消えゆく運命にある世界を異端なる貴方の力で救って――
「!?」
プツン
全文きき取れた。が……激痛に耐えられずそこで彼の意識は飛ぶ
…………み…………君……………
「君!」
「はいっ!」
知らない人の呼び掛けに答えるように眠りから目覚める
が、直ぐに彼の頭は混乱する。なぜならその視界に映る場所は自分の知らない場所なのだから
「ここは………どこだ?」
状況を整理しよと頭を働かせていると、横から
「やっと目が覚めたかと思えば……考え込んで……どうしたんだい?」
そう問われ、声の主の方を振り返るとそこには、日光を受け鮮やかに輝く頭髪にTheイケメンと言うに相応しい整った顔。異世界系の物語で出てきそうな服装と腰に立派な剣を携えた人が立ってこちらを見ていた。
「えっと〜、どなたでしょうか……?あとここは………一体?」
人がいることに安心と冷静を取り戻し、優先して聞くべきことを聞く。
「僕の名前は………『剣神』とだけ名乗っておこうかな……
そしてここはどこって話だけど、知らずに寝てたのかい?」
『剣神』……厨二病なのだろうか……いや、そんなことよりも
「寝てたって言うか……なんて言うか………気づいたらここにいて……あっ!なんかの撮影中でした?そしたらすみません。直ぐに失礼します……」
立派な衣装を来ていたので撮影と思いその場を後にしようとすると
「さつ……えい?何を言っているんだい?」
「え?撮影じゃないの?」
「さつえいとは何かは知らないけど、違うことは確かだね。それにしても驚いたよ。ほんとにここのことを何も知らなそうなんだから。」
「あぁと……すみません?」
「謝らなくて大丈夫だよ。ここはね「死外の森」魔獣の沢山いる区域だよ」
「死外の森」……普通ではないだろう森の名前……そして聞き間違いだろうか………魔獣………魔獣………
「魔獣っ!?」
やはり彼は厨二病なのだろうか………とも考えられる。が、今自分の置かれたこの状況。よくよく考えればおかしい髪色の男性。に確実に作り物とは言えない腰の剣………ある可能性が頭の中に過ぎる。
異世界召喚
「いや……でも……」
そんな現実で有り得るはずない……そんなことを考えていると
「下がって……」
なにかの気配を感じ取ったのか、急に腰の剣に手をやり構える『剣神』
その視線の先に目をやると
「なんだ……あれ…….?」
そこには大体2~3m前後のドラゴンが今にも襲ってきそうな形相でこちらを見ていたのだ。
「警戒しの強く、群れることをあまりしない赫龍だよ……
滅多に見ないのだがな…珍しい」
ここに来てまた、あなたは異世界召喚されたのですよ。と言わんばかりの証拠が出てくる。
「明らかに……つくりもんじゃねぇもんな……」
「来るよ!」
「!?」
ギュォーーー!そう叫び襲って来るドラゴンを目にし
あ、死んだ……そう思った瞬間
綺麗な円を描き目の前に落ちる異形の首が目に映る
「へ?」
「動かなかったのは正解だったね。下手に動いたら君まで切っていたよ。」
ま、冗談だけどね。笑顔をこちらに向けながら血の付着した剣を払い腰の鞘にしまう。
何が起こったのか分からない。いつ剣を抜いた?ドラゴンと『剣神』は視界に映っていた。恐ろしかったが、しっかりと情景は見ていたはずだ、だが、剣を抜くところはおろか、首を跳ねられる瞬間すら見えなかったのだ。
「夢……だよな……ハハッ…そうだよ…夢だ……」
そう言って頬っぺをつねる………痛い………
痛みとは現実か夢かの確認材料としての定番
痛みがあるということは………
「まじかよ……」
可能性はほぼ確信に変わる
異世界召喚
改めて混乱と不安が過ぎる
何が起きているのか
なぜ、こんなことになったのか。
だが、不思議と新しい世界への期待もそこには確かにあった。
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