ボクの初恋のひと~出会いそして初めての失恋
りりあ
第1話 入学式の日に
春
満開の桜の中、入学式の日が来た。それは日本の定番だ。そんな日に小学校に入学するボクは渡辺けいた。
渡辺家の長男だ。
この日のためにママが用意してくれたお子様用スーツを着て、おばあちゃんが買ってくれた黒に茶色のフチが渋いランドセルを背負い歩いて5分の小学校に向かう。
学校に着いたら、ママは保護者の集まる部屋にに行き、いやその前から近所のママ友とのおしゃべりに夢中だ。
おしゃべりしつつ、掲示板に貼られた組み分け名簿でボクのクラスを確認し、
「けいた、1組だって」 とそっけなく教えてくれた。
仲良しのママ友の子とはクラスが離れたらしく、すこしだけ不機嫌そうだ。
「ボクに八つ当たりしないでよね」って心の中で呟きながら、
「1組さんはこちらですよー」って声のする教室に入ってみる。
教室では1組になった子がすでに大勢集まっていた。先ほどの声の主はクラスの担任の先生のようだ。
先生と数人の大きな小学生が手分けをしながらボクたちを廊下に出し1列に並ばせた。
ボクは一番最後だった。きっと名前順ってやつなんだろう。わたなべ、という名前はたいてい最後になるようだ。
列になって並んでいると、そこに大きな小学生が何人もやってきた。6年生だ。6年生は1年生にひとりずつ横に並び手を繋いでいる。入学式の会場に一緒に入場しくれるのだ。
ボクの前の女の子の隣までは6年生ががいるが、最後にならんでいるボクの横には誰もいなかった。
6年生の人数が足りないんだ。
先頭にいる担任の先生にはこんな最後尾まで見えていないらしく、
「さ、これから会場にはいりますよ。パパやママ、上級生が見てるから元気に歩こうね!」と
周囲の子供たちに話しかけている。
ボクたちが並んでいる廊下の先が入学式が行われる体育館のいる入り口のようだ。
入り口の方から「それでは1年生の入場です。大きな拍手で迎えてください」
とマイクで話す声した。それと同時に並んでいる列が前に向かって動き出した。
みんなは6年生と手をつなぎ、最後のボクはひとりぼっちで進んでいく。
先頭が入り口を通過し、会場は拍手に包まれた。そんな中ついに最後のボクも体育館の入り口をはいり、
花で作ったアーチが見えてきた。「ごにゅうがくおめでとう」と書いてある、ピンクの花のアーチをくぐり抜け、1組の1年生は進んでいく。
ボクはひとりでキョロキョロしていると、保護者席に座っているママの姿が見えた。
ボクがひとりぼっちなのに気付いたようで、すこしだけムッとした表情をした。
ボクはいつも「けいたって本当にどんくさい」って言われているからどうせ、
なんでさっさと先生ににでも言わないのよ、って思ってるんだろうな、
そしてあとでこってり文句でも言われるんだろうな、と覚悟した。
ママはいつもボクが要領が悪いといっては不満げなんだ。
あと数歩でお花のアーチというときだった、ボクの右手にあたたかいものが触れた。
そしてボクの右手を誰かがぎゅーっと握ってくれた。
そっと右を向いてみると、そこには背が高く、長い髪を二つに結んだ6年生の女の子がいた。
「ねえ、きみなんで一人なの?」
その6年生がボクと手を繋いでくれてお花のアーチをくぐった。
「そっか、6年1組、人数たりなくてあんたと並ぶ人、いなかったんだね」
その子はボクが何か話すより先に、ぺらぺらと喋っていた。
「私、3組の1年生と並んで入場するの。でも後ろから見てたらあんたがひとりなのが見えて。あわてて駆け付けたったこと。せっかくの入学式、ぼっちで登場なんて伝説になるよ。涙出ちゃう」
その子は相変わらずよくしゃべった。
そっか、入学式の日の会場への入場。
ひとりぼっちは涙ものなんだ。その時初めて思った。
ボクはぼっちになるところだったんだ。
あと少しでボクたちが座る席、というときになってやっとボクは隣の6年生の顔を見た。
そこには、女神がいた。
それが、ボクと服部あすかとの出会いだった。6歳の春のことだった。
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