第20話

***




放課後は、まっすぐグランドに向かうと決まっている。


そして今日も寒空の下、ウインドブレーカーに身を包んだあたしは。



「いけー! そうよ、その調子ーっ!」



黄色いメガホンを片手に、少し興奮気味に声を張り上げる。




「ワアアァっ!」



とその瞬間、大きな歓声が響いた。



乱れるゴールネット。


激しく回転するサッカーボール。



誰かが、豪快なシュートを決めたのだ。



「やるじゃん、王子!」



あたしが声を高くすると、隣のなずなは「うん」と笑ってみせた。


それも、ちょっぴり恥ずかしそうに頬を染めて。



……ほんと、いつまで経っても初々しいんだから。



そう、さっきのゴールは、まさに今朝話題に出ていたなずなの彼氏──高月(たかつき)憐(れん)くんのお手柄だった。



〝王子〟というのは、あたしが勝手につけた愛称で。


6月の文化祭以来、なずなと話す時は彼をそんなふうに呼んでいる。


その時クラス劇で演じた王子様役が、ぴったりだったからっていうのはもちろん。


リアルに〝なずなの王子様〟っていう意味も、ちゃーんと込めてね。




──ピッ、ピッ、ピーーーッ!



憐くんが得点をキメてから、約5分後。


グラウンドにホイッスルが鳴り響いた。

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