第5話

「宿題見せてー」


「はぁ? 自分でやれよ」



朝一番の教室。


色とりどりの会話が飛び交う、そんな中。


あたしはひとり、頬杖をつきながら窓の外を眺めていた。



グラウンドのすぐ隣にある、真ん中より少し後ろの席に座って。


とっても静かに。


すました顔で。



だからきっと、誰も知らないだろう。


今あたしの心の中が──。



まだかなぁ……?


もう来るかなぁ……?


早く会いたいよぉ〜。



──ほんとは、こんなにも騒がしいだなんて。



気を抜いたら完全アウト。


一気に顔の筋肉が緩んじゃう。




──サァァ……。



その時急に風が吹いて、爽やかな緑を揺らした。



さわそわ、そわそわ。


落ち着きのないその様子は、あたしの心をそっくり映したみたい。



窓から視線を外すと、不意に黒板の右端の文字が目に入った。



“5月17日(水)”



もう5月も半分過ぎちゃったのか……。


入学式から1ヶ月ちょっと?


早いなぁ。




「あっ!」



へ……?

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