第3話

『……決めた。あたし、引退する』


『は?』



ポツリ、呟くようにそう言うと、日野っちは一瞬だけ目を丸くした。



『自由に学校も選べないくらいなら、その方がマシだもん』


『冗談でしょう……?』


『本気よ! これから社長に電話する』



カバンを掴み、急いでピンクのケータイを取り出す。


画面をタップしようとした、その時。



『仕方ありませんね』



日野っちの低い声が、それを阻んだ。


見ると、彼は覚悟を決めたような表情をしている。



『気は進みませんが……今回は、特別に許しましょう』


『わぁっ……!』


『ただし』



へ?



『いくつか、条件があります』


『条件……?』



『すべてちゃんと、守れますね?』




あたしはゴクリ、喉を鳴らしながら息を呑み込んだ──。

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