第2話




『いーーやーー! 絶対、いやぁーーーっ!』



中学3年の夏。


なんの前触れもなく切り出された“その話”に、あたしはひどく声を荒らげた。



“あなたの通う高校はもう決まってます”?


しかも、修平(しゅうへい)とは別の学校ですってぇ?


そんなの、絶対ありえない!



『自分の進路くらい、自分で決めさせてよ!』


『悪いですが、これがウチの方針なので』


『修平と同じ高校じゃなきゃヤダ!』


『無理です。そもそも、あなたの頭脳では……』



頭脳では、なんなのよ?



『日野(ひの)っちの意地悪!』



ぷくっと頬を膨らませたあたしは、スーツ姿の彼を鋭く睨みつける。


しかし日野っちはというと、怯むどころか呆れた顔をして。



『はぁ……』



わざとらしく、盛大に溜め息をついてみせた。



むぅっ。


あたしだって負けないんだから!



『ケチ! わからず屋! 堅物メガネ星人!』



ポカポカと腕を殴りながら、不満をぶつける。



『あたしは兎月学園(とげつがくえん)に通うのー!』


『沙弥さ──』


『特進は無理でも、普通クラスならあたしだって通えるでしょ?』


『わがまま言わずに、言うことを聞いてください』



『フンッ』



誰が聞くもんですか!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る