最期の一個(餃子大乱闘)【検索】
箸でつつくような音が
止まることなく鳴っている。
食器がぶつかる音、麺を啜る音、
グラスに入った烏龍茶を飲む音。
熱いものを冷ますように息を吹きかける音、
さまざまな音が周囲に蔓延っている。
しばらくしてその速度が遅くなっていくと、
1人の男が口を開いた。
「餃子、最後の一個ですね」
続けて右隣の男も、ええ、と言った。
向かい側の男が「これは"アレ"をする時では」
と言い、隣の男が「始めましょう」と言った。
空の皿が並んだ円卓に丸い皿に餃子がひとつ。
彼らの右の耳たぶには四角形の
首飾りがぶら下がっている。
その色は四色で赤、青、緑、黄色。
「貸切にしといてよかったですね」1人が言う。
円卓を囲うように
十字方向に彼らは間合いをとる。
はじめに銃弾を上げたのは赤だった。
それが合図となり、それぞれが引き金を引く。
1人は潜り、1人は伏せる、
1人は円卓の上に乗り、1人は右肩を撃たれる。
その銃声は勇ましく、鼓膜に衝撃が走る。
だん!だん!だん!
と鳴り止まない銃弾の音。
彼方此方に線が飛ぶ。
銃を地面と平行に向け、足を狙う者。
2つ撃ち込んだその銃弾は彼の足を貫通した。
その場に散る赤い血は、どの赤よりも赤い。
鳴り止まぬ銃声、食器が割れる音、
床を抉るような靴の音。
弾倉に弾を込めた後、
その弾が線を描き貫通する。
彼の鳩尾は赤く染まった。
鳴り止むことなく
その破裂するような音は止まない。
一瞬の判断の迷い彼の頭に穴が空いた。
残るは2人。
音が止んだように姿を顰める。
そして互いに振り向き、間合いを取る。
引き金を弾き、また音が両耳を襲う。
そこで気を抜いてしまった。
しかしその銃弾の軌道は的を得なかった。
隙をついたが正解、
見事にそれは彼の眉間を貫いた。
乾いた音の中、漸く箸を手にし、
餃子に手を伸ばす。
溜め息を吐き、閑散としたその部屋を出る。
その背中は血で濡れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます