4話:園田「色褪せた世界に光を届けてくれるかもしれない」
☆☆☆
言葉を詰まらせてしまった。
私と若月くんだけがいる教室に雨の音だけが響いていた。
生まれて初めて面と向かってされた告白。それはとても嬉しくて、それ以上に驚いた。
これまでもLINEとか電話なんかでは告白されたことはある。でも、二人きりの場所で、文字にすればたった四文字のストレートな言葉で「好きです」と言われたのは初めてだった。
私は動揺して、目が泳いでいるのが自分でもわかった。そんな表情を若月くんに見られたくなくて、思わずパッと顔を下に向けた。
しまった。若月くんは凄く勇気を振り絞って告白してくれたはずなのに、すぐに顔を俯かせてしまうなんて失礼だった。
丁度、私の前髪が垂れ下がっていて目元は隠れている。目が合うことはないだろうと、視線だけを動かして若月くんを見つめる。
若月くんの顔は朱色に染まっていた。その姿はとても柔らかく輝いて見えた。真っ暗な夜に優しく道を照らしてくれる月みたいだなって思った。
若月くんは、私が見ている色褪せた世界にも光を届けてくれるかもしれない。
正直にいうと、若月くんのことは男の子として好きかどうかはわからなかった。でも、傍にいれば、私が見たことのない世界を見せてくれそうな若月くんのことを、好きになれるかもしれない。そんな気がしたから、私は告白を受けることにした。
「え、園田さん、本気?」
自分から告白してきておいてその反応はどうなんだ。それがおかしくて私は思わず噴き出して笑った。若月くんもつられて笑って、放課後の教室に二人分の笑い声が響いていた。
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