天使の落日
昼間でも星が見えそうな、よく晴れた午後のひととき。空から天使が落ちてきた。
目撃例01.高層ビルの窓から
会社員 男性(34歳)の証言
あの日は遠くまで見渡せるくらい空気が澄んでいたのを覚えています。
私のオフィスは高層階にあり、ふと、窓の外を白く光るものが下に飛んでいくのが見えました。こんな都市部に大きな鳥か、と不思議に思い、窓から見下ろすと、それはヒトの形をしていました。
背中に翼が見えて、天使が飛んでいる、と思いました。墜落しているとは考えませんでした。それくらいです。
目撃例02.空を見上げたら
カフェ店員 女性(27歳)の証言
誰かが悲鳴を上げたように聞こえました。誰か、まではわかりません。
私は店先でクーポンを配布していたので、すぐに空を見上げました。その時には、もう、天使は道路に落ちる寸前でした。思わず目をつむって顔を伏せたので、何も見ていません。
目撃例03.どしゃ
学生A 女性(17歳)の証言
最初に悲鳴を聞きました。友達と喋りながら歩いていたので、気にはなったけどそっちを見ないで喋り続けました。
それから、柔らかくて、でも重たいものが落っこちる音が聞こえて。どしゃって、レトルトの袋を落としたみたいな。
驚いて振り返ったら、天使はすでに倒れていました。
目撃例04.誰も見ていない
学生B 女性(17歳)の証言
私も何も見ていません。友達とおしゃべりしてたから誰の悲鳴かもわからないし、友達が振り返ったから私もそっちを見ただけで。
ひょっとしたら墜落じゃなくて天使の死体が降ってきたのかもしれないし。
あの場所にいた人みんな、何が起きたかわからなくて誰も近寄らなかったと思います。
目撃例05.天使の輪
学生A 女性(17歳)の証言
そういえば、天使の死体から頭の輪っかが転がって、誰かが、転がった天使の輪を持っていったような気がする……。誰って、そこまで見てないのでわかりません。
墜落死した天使の輪を持ち去った人物がいる。世間ではその噂で持ちきりだった。だが、私は知っている。
……つづく
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